防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1061号 (2021年10月15日発行)
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自衛官にとっての「人生100年時代」(2)
前人未到の「小子高齢化社会」到来

平均寿命が延び、「長寿大国」へ
 今回と次回で、「人生100年時代」の現状と将来、そしてそれが意味することを解き明かしておこう。
 例年、9月の「敬老の日」になると、65歳以上の高齢者に関する話題がニュースになる。今年は、「65歳以上が前年より22万人増え、過去最多の3640万人に達した。総人口に占める割合は29・1%であり、先進国で断トツの1位、2040年には35・3%にまでなる見込み。高齢者のうち4人に1人が働いていることがわかった」とあった。
 日本人の令和2年の「平均寿命」は、男性が81・64歳、女性が87・74歳であり、年々伸び続け、男性は85歳に近づき、女性は90歳を越える。当然、ある年齢に達した人があと何年生きるかを示す「平均余命」はもっと長い。
 これらはあくまで平均値なので、おおむね半数の人がもっと長生きする。それを実証するように、現在、8万6500人ほどおられる100歳以上の人が、2050年には68万人に達すると見積もられている。日本は文字通り「人生100年時代」、つまり「長寿大国」に近づきつつある。

出生率が低下し、人口減少へ
 本来、おめでたいはずの長寿大国は手放しでは喜べない部分がある。その原因は、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す「合計特殊出生率」が近年低下傾向にあり、令和2年は、コロナ禍の影響もあって前年より0・02ポイント低い1・34まで落ち込み、出生数も84万832人と過去最少となった。出生率は、今後益々低下すると見積もられている。
 これらから、我が国の人口推移は表のとおり、2008年をピークに減少傾向にあり、2050年までに1億人を切る。同時に、15歳〜64歳の生産年齢人口も減少し、逆に高齢化率が高まることから、まさに前人未到の「少子高齢化社会」を迎えることになる。
 しかもこの現象は遠い将来のことではなく、すでに始まっている。「少子高齢化」には様々な問題が内在しているが、その最大の問題は「社会の支え合い構造」が変化することであろう。細部は次回取り上げよう。

「退職自衛官の再就職を応援する会」について
 前回、ホームページの案内のみに終っていた当会は、「生涯自衛隊ファミリー」を目指し、現役、OB問わず自衛官の人生に寄り添うことを活動の主眼とするOB有志によるボランテイア組織の名称です。現在、陸海空OBなど約10名が活動していますが、趣旨に賛同し、志のある者はだれでも入会し、活動できます。
 様々な制約のある既存の援護組織の周辺で、自衛官の再就職や再々就職を様々な形で応援しています。本シリーズの執筆もその活動の一環として実施しています。詳しくはこちらまで。


ノーサイド
北原巖男
言葉そして行動

 全国の自衛隊員の皆さん・本紙読者の皆さんには、10月8日に岸田文雄新首相が衆参両院で行った「所信表明」をテレビや新聞、インターネット等でご覧になられ、それぞれにいろいろ感じたり、ご自分の任務等とも絡めて考えられたことと思います。
 岸田首相は、「国民の声を真摯に受け止め、かたちにする、信頼と共感を得られる政治が必要」であるとして、「国民に対する丁寧な説明を行う」こと、「国民との丁寧な対話を大切にしていく」ことを強調しています。そのうえで「国民のニーズに合った行政を進めているか、徹底的に点検するよう指示しています」とも述べています。
 また同首相は、現下の新型コロナウイルス対応に関し、「常に最悪の事態を想定して対応することを基本とする」ことを明言。
 これは、岸田内閣が掲げる新型コロナウイルス対応・経済政策と並んで3大重点政策に掲げる「国民を守り抜く、外交・安全保障」についても、論を待たない危機管理の要諦そのものです。
 隊員の皆さん・読者の皆さんもご承知の通り、我が国固有の領土である尖閣諸島に対する中国公船等の頻繁な不法行為、台湾の防空識別圏への異常ともいうべき多くの戦闘機・爆撃機等の度重なる侵入、南シナ海での活発な海洋進出、更に北朝鮮の核開発や止むことの無い新型ミサイル等の発射実験など、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増して来ています。
 岸田首相は所信表明にて、「外交・安全保障政策の基軸は、日米同盟」であり、「日米同盟を更なる高みへと引き上げて行く」ことを鮮明にし、今から7年前の2013年、当時の安倍内閣が策定した我が国の安全保障に関する基本方針「国家安全保障戦略」の初めての改正を打ち出し、それに伴い「防衛大綱」、「中期防」の改正にも取り組むとしています。
 そして「この中で、海上保安能力や更なる効果的措置を含むミサイル防衛能力など防衛力の強化」に言及。
 これは、海上保安庁の巡視船の整備等のほか、これまでも議論されたことのある自衛隊のいわゆる "敵基地攻撃能力の保有如何" について、具体的検討の俎上に上げて行く意向であることを窺うことが出来ると思います。憲法の下、正に国民の声を真摯に受け止め、活発な議論や丁寧な説明を尽くし、国民の信頼と共感を得て行かなければならない、慎重な対応が求められる重要案件です。
 今回の所信表明で岸田首相は、「経済安全保障」など新しい時代の課題に、果敢に取り組んで行くことも打ち出しました。我が国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保して行こうとする経済安全保障。今回の組閣では、経済安全保障担当国務大臣ポストが新設され、小林鷹之衆議院議員が就任されています。今後、経済安全保障を推進して行くための法整備等にも取り組んで行くものと思われます。
 筆者は、かつて広島防衛施設局(当時)に勤務し、毎日原爆ドームを横に見ながら通勤し、またその後の東ティモール在任中には、同国のノーベル平和賞受賞者でもあるラモス・ホルタ大統領を広島平和記念資料館に案内したことがありました、そんな筆者が思わず前かがみになって聴き入ったのは、岸田首相のこの表明です。
「被爆地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは、 "核兵器の無い世界" です。私が立ち上げた賢人会議も活用し、核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、唯一の戦争被爆国としての責務を果たします」。…具体的にどう行動して行くか?
 2021年9月24日現在、86か国・地域が署名し、56か国・地域が批准している「核兵器禁止条約」。
 2021年1月に発効しましたが、核兵器国は一国も入っていません。米国の核抑止力に頼る日本も入っていません。この条約が目指す核廃絶というゴールは共有しているものの、核兵器の無い世界を実現するためには核兵器国を巻き込んだうえで核軍縮を進めていくことが不可欠である、というのが日本の立場です。
 なお、菅 義偉前首相は、広島市民や長崎市民の皆さん等が求めている2022年3月に初めて開催される「核兵器禁止条約締約国会議」へのオブザーバー参加についても、「慎重に見極める必要がある」旨の対応をしてきました。
 「私は、外交、安全保障の要諦は、『信頼』だと確信しています」
 所信表明でこのように言明されている被爆地出身の岸田首相なればこそ、予め米国をはじめ関係諸国との信頼関係を基盤とする外交調整の下、歴史的な第1回締約国会議のオブザーバー参加に踏み切ることを期待したいと思います。「TOO LATE」にならない、「遅きに失しない」、日本外交の行動です。
 厳しさ、複雑さを増す国際安全保障環境の中で、改めて着実な防衛力の整備としたたかな外交活動の展開という、「車の両輪」による行動の重要性を感じます。
 10月31日は、総選挙の投票日です。
 「あ、ごめん 選挙に行かなきゃ」(筆者のふるさと長野県伊那市のHPより。令和3年度明るい選挙啓発ポスター中学校の部入賞作品)

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


モンゴル軍工兵部隊に対して能力構築支援
道路建設・測量教育を実施
<第2施設団>
 第2施設団(団長・圓林栄喜陸将補=船岡)は、9月3日から14日までの間、モンゴル国トゥブ県ゾーンモドにおいて、道路建設及び測量教育に関する能力構築支援を行った。
 本事業は、モンゴル軍工兵部隊のPKO派遣に必要な施設分野における人材育成に貢献することを目的として、2014年から支援が開始されており、第2施設団は、2018年から隊員を派遣している。
 今回は、これまで実施してきた道路構築に関する教官養成に加え、4か年計画でモンゴル軍工兵部隊の測量能力の向上を目指すものであり、第2施設団本部佐藤智幸3陸佐以下9名の隊員が派遣された。
 測量教育においては、基礎的事項の学科及び器材の取扱い等を教育し、その能力向上を図るとともに、道路構築においては、モンゴル軍工兵部隊が担任するコンクリート打設の暗渠2ヶ所を含む砂利道約200mの工事について、陸自教官が指導・助言を行い、教官養成と道路構築技術の向上を図った。
 気温が6℃と冬のように冷え込む日もあったが、モンゴル軍工兵部隊は10日間の工程で、見事に道路を完成させた。
 竣工記念撮影での彼らの充実感と自信に満ちた顔から、教育支援に参加した隊員たちは、測量能力及び道路構築技術が確実に向上したことを確信した。
 教育期間中、新型コロナウイルス感染症対策としてモンゴル国に入国後14日の停留を必要としたが、オンラインを活用した助言及び教育を実施することで効率的に支援することができた。
 また、モンゴル国防省広報部門から取材を受け、国防省が発刊する新聞への掲載、国営放送での紹介、フェイスブックへの投稿が行われ、モンゴル国内における本事業に対する関心の高さが窺えた。
 チーム長として参加した佐藤3陸佐は「本事業に参加し、モンゴル軍工兵部隊の道路構築に関する能力向上に寄与できたことは大変光栄です。今後、モンゴル軍工兵部隊がPKOに派遣され、活躍することを祈念します」と語った。

IPACC及びSELF
根本陸自最先任が参加
 9月13日から15日までの間、陸自最先任根本和男准陸尉は米国に出張し、インド太平洋地域陸軍参謀総長等会議(IPACC)及び上級曹長フォーラム(SELF)に参加した。
 今回の会議は、米陸軍がインド太平洋地域陸軍と共催し、インド太平洋地域の陸軍種トップ等を招待し開催され、会議と連接して上級曹長級による上級曹長フォーラムが併せて開催された。
 上級曹長フォーラム(SELF)においては各国陸軍上級曹長級の参加者と「新たな環境に向けた部隊の育成」をテーマについて意見交換を行うとともに、米国及びパプアニューギニアをはじめとする参加国と二者懇談を行い、各国下士官との信頼関係構築・発展に寄与した。

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