防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
スペーサー
自衛隊ニュース   1050号 (2021年5月1日発行)
-
1面 2面 3面 4面 5面 7面 12面

ノーサイド
北原巖男
羅針盤(the guiding post)

 4月16日(日本時間では17日未明)ホワイトハウス行われた菅首相とバイデン大統領の日米首脳会談。「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」と題する日米共同声明が発表されました。
 その中に、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協同する必要性を認識した」との記述が盛り込まれていること等から、テレビや新聞各紙は「日米声明、台湾明記」・「日米、対中へ同盟深化」・「日本、防衛力強化」・「中国、強烈な不満と断固たる反対」等の大きな見出しを打って報じています。
 台湾情勢については、3月23日に米インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリーノ海軍大将が、中国による台湾侵攻の脅威は深刻であり、多くの人が理解しているよりも差し迫っているとの考えを示しています(3月24日AFP)。また、4月12日には過去最多25機の中国の戦闘機や爆撃機等が台湾の防空識別圏に侵入。空母「遼寧」が演習を続けるなど緊迫の度合いを増しています。
 日米首脳会談と同じ日に台湾に近接する沖縄県与那国島を訪問、与那国駐屯地を視察された岸防衛大臣は、記者の質問に対して、台湾とは基本的な価値観を共有する大切な友人であり、良い交流の歴史もある。我が国としては当事者間の対話によって平和的に解決されることを期待する立場である。防衛省・自衛隊としてもこうした立場に基づいて、適切に対応して行く旨答えています(防衛省ホームページ)。
 日米共同声明は、その内容が外交・防衛や経済・気候変動等多岐にわたることから、またトランプ政権と異なり特にバイデン政権の下では、日米間で合意されるに至るまでには、双方の政府部内、関係省庁の皆さんが、総力を挙げて検討・調整等に取り組んで来たことと思います。
 もちろん防衛省においても、憲法・防衛計画の大綱・我が国の防衛体制・日米安全保障体制、去る3月16日に日本で行われた日米安全保障協議委員会2+2における「共同発表」等を踏まえ、地域情勢や厳しさを増している安全保障環境に対する冷静な分析・評価等を背景に、岸防衛大臣のリーダーシップの下、防衛大臣を補佐する車の両輪である内部部局と幕僚監部の皆さんが、夜を徹してギリギリの検討・交渉等をされて来られたに違いありません。
 そうした過程を経て発出された共同声明です。
 例えば、共同声明は、「日本は、同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」「日米両国は、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と明言し、更に「日米両国は、困難を増す安全保障環境に即して、抑止力及び対処力を強化すること、サイバー及び宇宙を含むすべての領域を横断する防衛協力を深化させること、そして、拡大抑止を強化することにコミットした」とあります。
 そして菅首相は、前述の共同記者会見で、同盟強化の具体的な方途については、両国間で検討を加速することを確認した旨述べるとともに、「この声明は、今後の日米同盟の羅針盤となるものであり、自由で開かれたインド太平洋≠フ実現に向けた日米両国の結束を、力強く示すものであります」と強調しています。(ちなみに、米ホワイトハウスのホームページでは、羅針盤をthe guiding postと翻訳しています)
 防衛省・自衛隊としては、強力な日米同盟と多国間主義アプローチを重視する我が国の外交戦略の慎重な展開の中で、国民の皆さんの理解と支持を得ながら、日米同盟の羅針盤に基づいて防衛力の強化・抑止力・対処力の強化等を着実に進めていくことが、国の防衛を担う責任ある行動と言わなければなりません。
 そのためには、まず防衛省・自衛隊の全ての隊員自身が、共同声明策定の背景等を含め、その内容をしっかり学び、理解し、納得することが大切ではないでしょうか。改めて申すまでもなく、組織は人であり、隊員一人ひとりが防衛省・自衛隊に与えられた我が国の防衛という任務の完遂に欠かせない、生きた考える存在です。
 ここで共同声明に、「日米両国は、インド太平洋におけるASEANの一体性及び中心性並びに "インド太平洋に関するASEANアウトルック" を支持する」との記述が盛り込まれていることに触れてみたいと思います。これまでも日本はASEANを重視し、支援し、2019年6月のASEAN首脳会議で採択された "インド太平洋に関するASEANアウトルック" について、そこに記載された海洋協力・連結性・SDGs・経済等に対する様々な協力を行い、日本ASEAN戦略的パートナーシップの強化に努めています。
 かつて東ティモールにて国づくり等に携わってきた筆者としては、東ティモールについても、今から各分野の協力を考慮願いたいと思うのです。東ティモールは、2011年3月にASEANに正式加盟を申請しています。同国の円滑なASEAN加盟を支持して来ている我が国が、実質的に加盟を先取りする外交戦略を展開することは、必ずや我が国の国益にも大きく寄与するものと考えます。

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


2020年度の緊急発進は725回
統合幕僚監部が公表
 4月9日、統合幕僚監部は2020年度の緊急発進(スクランブル)状況を公表した。対象期間は2020年4月1日から2021年3月31日。緊急発進回数は725回。過去5年間では最少だった。国別では中国機に対する458回が最多で全体の約63%を占め、次いでロシア機が258回で約36%、その他が9件で約1%だった。
 領空侵犯として公表したのは、10月2日にロシアMi-8×1機が北海道知床岬領空内を飛行した事案1件。特異飛行は12月22日に中国H-6爆撃機×4機とロシアTu-95爆撃機×2機が、日本海から対馬海峡を通過して東シナ海及び太平洋を共同飛行した事案等14件。
 方面隊別では、南西航空方面隊が404回で最多。次いで北部航空方面隊が206回、西部航空方面隊が79回、中部航空方面隊が36回だった。

新指揮官等着任!
-
札幌病院
 自衛隊札幌病院(病院長・鈴木智史陸将)は、3月29日に病院長着任式を挙行した。
 鈴木病院長は、「『信頼される自衛隊札幌病院の創造』を統率方針として掲げ、『即応』『進歩』『誇り』の3つを要望した。また、自衛隊札幌病院は、自衛隊員及び隊員家族や地域の方々に対して、効果的かつ質の高い医療を提供すると同時に、事態対処時における治療・後送の中核拠点となるとともに、衛生科隊員に対する教育訓練の中心的な役割を果たす必要があり、病院に勤務するそれぞれが、持っている知識、技術と英知を結集し組織化して、これらの役割をしっかり果たし、隊員及び隊員家族から、地域の人々から、さらに国民からより一層『信頼される自衛隊札幌病院の創造』に向けて先頭に立って専心努力する」と着任の辞を述べた。
-
第4地対艦ミサイル連隊
 八戸駐屯地は3月15日、同日付で第4地対艦ミサイル連隊長兼ねて八戸駐屯地司令に着任した遠藤智明1陸佐の着任式を実施した。
 遠藤1陸佐は愛知県尾張旭市出身で、西部方面総監部防衛部から着任した。着任式において遠藤1陸佐は、着任の辞について「戦士として考え、行動せよ」を連隊長要望事項とし、その後、第4地対艦ミサイル連隊各中隊の威風堂々とした観閲行進が行われ、午後からは状況報告や初度巡視が行われた。遠藤1陸佐の指揮のもと、第4地対艦ミサイル連隊は新たな一歩を踏み出した。
-
第15旅団最先任
 第15旅団(旅団長・佐藤真陸将補=那覇)は3月12日、那覇駐屯地において旅団最先任上級曹長交代式を行った。
 佐藤旅団長は、訓示の中で新たに上番する蛯原寛子准陸尉の「親しみやすく温厚誠実」な人柄を隊員に紹介し「指揮官の直接の補佐者として、部隊の精強化、また部隊の伝統の継承者として思う存分能力を発揮できるよう自主積極的に活動してもらい、准曹士の更なる活性化につなげてもらいたい」と、今後の期待を述べた。
 また、佐藤旅団長は下番する久場良彦准陸尉に対して「あらゆる現場へ積極的に進出し、適時適切に意見具申してくれた」と、これまでの任務遂行に対する労をねぎらった。
 旅団長の紹介後、蛯原准陸尉は「隊員同士でしっかりと連携し、強く結び合うことが必要不可欠と考え、太く、速く、幅広い連携を重視していこうと思います」と抱負を述べた。
 女性自衛官が作戦基本部隊である師団・旅団において最先任上級曹長に就任することは、全国で初めてとなる。
-
東北方面通信群

 3月26日、陸上幕僚監部装備計画部通信電子課総括班長から第30代東北方面通信群長として鷺谷和久1陸佐が着任した。
 着任式は、幕僚(行政)副長(堀江祐一陸将補)立会のもと、仙台駐屯地体育館において実施され、参列部隊(部隊指揮官副群長村岡2陸佐以下170名)を巡閲するとともに、着任にあたり統率方針として「信頼される東北方面通信群の実現」を挙げ、「通信群がいるからシステム通信は大丈夫」と信じられ、頼られる通信群を目指し、群長としての責務を全うすると決意を述べるとともに、「常に誠実に」「明るく、元気に、前向きに」の2点を隊員に要望した。また、仙台駐屯地に所在する部隊を視察し、部隊の現況を把握した。


NEXT →
(ヘルプ)
-
shop
-
マスク
-
日本の機甲100年
通販部
10
Copyright (C) 2001-2021 Boueihome Shinbun Inc