防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   995号 (2019年1月15日発行)
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ノーサイド
北原巖男
温故知新

 今、この「防衛ホーム」を手にされている自衛隊員の皆さん。昨年12月に策定されたばかりの「防衛計画の大綱」そして「中期防衛力整備計画」の下で、それぞれ任務の完遂に努めて行く歴史的な年のスタートに立っています。
 ふと、かつて私が秘書官を務めた栗原祐幸(くりはら ゆうこう)防衛庁長官が、常日頃から話されていたことが浮かんで参りました。その一例を、長くなって恐縮ですが「内外ニュース懇談会」(1986年11月14日)での講演に見てみたいと思います。多くの隊員の皆さんが生まれる前の昭和の時代、今から33年も前の古い話なのですが。
〇「日本の防衛は、憲法のもとに必要最小限度のものをやっていく。・・防衛計画の大綱、それを着実にやっていく。これを着実にやるだけでも、日本国内では予算のときにそれは多いとか、多くないとか大変な議論になるのです。だけれどもせめてそれだけはクリアしないと、日本がアメリカとの関係において、あるいは西側陣営の一員としても私は評価されないと思う。評価をされないで、それでいけるならば結構でございますけれども、世界の西側陣営、自由主義陣営から孤児になったら日本は本当にもろいものです。・・ですから日本の国際化ということはどういうことかと言うと、世界の人たちに日本を理解させる、そういう努力をすることが日本の国際化だと思いますね。簡単に言ってしまうと。それを防衛の面でも、経済の面でも、文化の面でも努力を続けていかなければならないのではないかというふうに考えております」
〇「一番の問題点は何かと言うと、やはりどうしてもいい隊員を募集するか、それともそれをどう鍛えていくか。そうでないと正面装備、いろいろ兵器その他そろったけれども、魂の抜けた自衛隊ではこれはいけない」
〇「防衛というものは、しょせん国民の理解を得た上で、あるいは国民の理解とそう離れないところで、防衛政策をやっていかなければならん。国民のその水準でやるということも一つの方法でしょうが。国民の水準と少なくともあまりはなれたところで防衛をやってはいかん。そうでないと引っくり返りますね。これは非常に努力のいることではございますけれども、国民の理解を得るような、そういう努力をし、そのラインの上に立って、防衛努力をしていくということが必要ではないかと思います」
〇「日本は日本だけの道を、防衛面についても日本だけだ、日本人のエゴイズムで、おれたちはもういやだよ、これだけだよ、そういう格好で防衛はやれない。アメリカがどう考えているか。世界がどう考えているか。その考えていること、言っていることが、理不尽な場合には、それはできませんと断らなければならん。理不尽でない限りにおいては、それは、アメリカが言ったからとか、これは圧力だからといって止めるわけにはいかない。リーゾナブルなことについては、向こうが言う、言わないにもかかわらずやらなければならん。アンリーゾナブルなことについてはそれはいかん。それにはやはり日本全体が防衛哲学というものを持たなければならん。その防衛哲学の基盤は何かと言うと、やはり国民の理解である。国民の理解を高め、国民の理解の線のところでやるか、あるいは、あまり離れないところで防衛努力をしていくということが一番肝要ではないかと思います」
 新しい「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」。国民の皆さんの理解と支持を得るための真摯な努力のスタートも、今です。

北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


パプアニューギニア軍楽隊への演奏指導
中音派遣要員を表彰
 12月20日、パプアニューギニア(PNG)に対する能力構築支援事業において、同国防軍への軍楽隊育成支援を行った陸上自衛隊中央音楽隊の派遣要員6名に対する表彰式が、陸幕会議室で実施された。
 本表彰は、2015年の事業立ち上げから、PNG軍楽隊を2018年11月開催のAPEC18で演奏ができるまでのレベルに教育を実施した功績を称えるもの。これまでに派遣された14名の中から2回以上の派遣経験者を対象とし、派遣団長経験者2名と6回派遣経験者1名に3級賞詞が、その他の3名に4級賞詞が授与された。
 本事業は他国軍楽隊の立ち上げと育成をゼロから支援するという初の試みで、PNGに指導要員を6回派遣(通算9ヵ月、のべ30名)するとともに、PNG要員を日本国内に5回受入れて研修した(通算5ヶ月、のべ23名)。楽器も演奏経験も満足に無い、文字通りゼロからの支援は、11月17日のAPEC首脳会議における歓迎演奏で見事に結実した。また、夕食会では日本の童謡「ふるさと」を安倍首相の前で演奏した。
 山崎幸二陸上幕僚長は、「一国の軍楽隊を最初から育てるということは、陸上自衛隊初の偉業であり、その任務を完遂し日本とパプアニューギニアとの関係強化に資することができたのは歴史的なことだ」と大きな賛辞を贈った。
 2回の派遣団長経験がある蓑毛勝熊1陸尉は記者団に対し、「全くの未経験者を指導するのは大変だったが、中央音楽隊での教育体制をそのまま応用して持ち込んだ結果、軍楽隊をいちから立ち上げられたのは大きな財産となった」と振り返った。また印象に残ったこととして「小学校で行った初めての演奏会」を挙げ、「ドレミファソラシドも吹けなかった訓練生が小学生から『ありがとう』と言われている様子を見た指導隊員が涙を流して喜んでいた」と感慨深げに話してくれた。

浜松広報館 各種イベントで空自をPR
 航空自衛隊浜松広報館は、11月にいくつかのイベントを開催した。
 まず、11月10日、11日の両日に第2術科学校が保有する「基地防空用地対空誘導弾等」の展示イベントを行った。
 両日とも日頃は見ることが出来ない81式短距離地対空誘導弾射撃統制装置及び発射装置、基地防空用地対空誘導弾射撃統制装置及び発射装置、20mm対空機関砲、トラック2・1/2tが展示され、約1時間ごとに5分程度の作動展示を実施し、多くの来館者が興味深そうに見学した。来館者から「こういうもので備えていることを初めて知りました」「動く様子を初めて見た」「使用されることが起きないことを願っています」という声が聞かれた。また、2・1/2tトラック荷台の体験搭乗を行った。機材展示について熱心に質問する来館者もいた。トラックの体験搭乗は子供たちに人気で、行列ができるほどだった。
 11月11日には、5歳から小学3年生を対象とした「親子プラモデル教室」を実施した。15組の家族が協力し合って航空自衛隊機のプラモデル作成に挑み約1時間で見事に完成し、家族の貴重な思い出の時間とともに、うれしそうに広報館を後にした。
 11月16日〜11月18日にかけては、「親子写生会」イベントを開催した。小学生以下の子供とその保護者が対象で、80名の参加があり、親子和気あいあいと好きな航空機を描いていた。このイベントで作成した作品は、11月28日〜12月24日までの間、展示資料館1階ロビーにて展示した。また、同期間日本の航空教育(浜松での教育を含む)に多大な貢献をしたフランス航空教育団来日100周年記念パネル16枚を展示した。
 11月17日にカレンダー写真採用者の表彰式を実施した。2019年広報館カレンダーは、観光協会等に広報用に配布される。
 浜松広報館は、「航空自衛隊の現状を理解して頂くため、いろいろなイベントを企画しており、ぜひ、ご家族で、あるいはご近所、ご親戚等をお誘いの上、御来訪下さい」としている。

平成30年度第2回自衛艦隊等先任伍長会報
 海上自衛隊先任伍長(関秀之海曹長)は12月12日、自衛艦隊等先任伍長会報を開催した。「自衛艦隊等先任伍長」は全国に12名。この日も北は大湊地方隊、南は佐世保地方隊から "三つ桜" の先任伍長が市ヶ谷の地に集い、各種議題について討議した。
 午後には村川海上幕僚長の講話もあり、濃密で充実した時間を過ごした。
 市ヶ谷での開催という地の利を生かし、各施策の担当課担当幹部から直接、今後の方針や展望についての説明を受ける時間も設けられた。説明を聞き終えると、先任伍長からは熱心な質問が飛び交い、自らが発信者となるに足る理解を深めた。また現場の抱える問題や悩みを、丁寧かつ子細に説明する姿からは、あらゆる配置の先任伍長において、 "Ask the Chief(先任伍長に聞けば分かる)" が組織に根付いていることを印象付けた。
 「形骸化が一番怖い。本来やるべきことを、今一度見直し、本当にしっかりやっていこう」と海上自衛隊先任伍長が呼びかけると、自衛艦隊等先任伍長一同は神妙に頷いていた。

機略縦横(8)
護衛艦隊先任伍長 海曹長 東 和仁
 わが国では少子化が進み、どこも働き手が不足しているということが言われています。我々の組織も例外ではなく、入隊希望者の減少が見られるのが現状です。
 このような状況下にあって、この組織を仕事の場として選んでくれた若者をどのように育てていくか。これは、組織が精強さを維持していく上でも非常に大事なことであり、真剣に考えていかなければなりません。若者が任務への誇りを持ち、やりがいを感じながら活躍できる組織でなければ、組織を離れる選択をする者も出てくるでしょう。
 「若者を教え導き、やりがい溢れる組織の構築を目指す。」簡単ではないかもしれませんが、先任伍長として、しっかり取り組んでいきたいと思います。
 艦艇は、ひとたび洋上に出れば、携帯電話の電波も途切れ、テレビも映らない、何日も帰宅できない…このようなことが多々あります。しかし、これらに耐え、任務に黙々と取り組む若者がいます。このような若者が成長してくれることが、ひいては組織の磐石化につながるものと考えます。

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