防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   2011年12月15日号
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100式鉄道牽引車修復記念式典
関東補処火車部の手で70数年ぶり往年の姿に
輸送学校

 激動の時代に大陸を縦横に駆けた鉄道牽引車が70数年の時を超えて蘇った。
 11月28日、陸自輸送学校(保坂収校長=朝霞)で「100式鉄道牽引車修復記念式典」が行われた。100式鉄道牽引車は、第2次大戦中に陸軍鉄道連隊が使用した軌道・道路両用の六輪起動自動車(昭和15年=皇紀2600年制式化)。中国大陸や南方戦線において、主用途の軍用貨車の牽引のほか、鉄道の保守・警備や、タイヤ車輪に履き替え道路を走るトラックとしても運用された。戦後は、残存車両が国鉄や私鉄に委譲され、1960年代まで保線業務などに従事して各地で余生を送る車両が複数存在したが、現在は、輸送学校前庭に展示されている一両のみが保存車という、大変貴重なもの。
 101建設隊(鉄道部隊。1966年廃止)の所有車両が輸送学校に引き継がれ、長年に渡り展示車両として親しまれていたが経年と数十年に及ぶ屋外展示で錆による腐食が激しく、部品の欠落箇所なども多かったため、平成21年12月に関東補給処へ整備・修復を依頼。約1年10ヵ月の修復期間を経て10月28日に輸送学校へ里帰りし、晴れの日を迎えた。式典は修復成った100式鉄道牽引車の前に式場を設け保坂学校長、岡田俊和東部方面輸送隊長、堀井克哉関東補給処火器車両部長、谷川真一関東補給処工場長、修復担当の技官ら十数名など招待者、学校職員が参列して執り行われた。
 学校長は修復に携わった関東補処火車部、東方輸送隊に感謝を述べ、「腐食激しい車体の解体、新たな工具作成、エンジン修復(パイプ・シリンダーに至るまで分解・研磨)、ハンドル、ボルト、ビスの新規作成、(当時のカーキ色を正確に再現した)塗料の調整などの話を聞けば聞くほど、感謝の思いを深くします。輸送学校一同、先人の思いのこもった100式鉄道牽引車を輸送隊員の誇り高き象徴として後世に伝えるとともに、陸上自衛隊の各種事態に迅速、的確に対応できる輸送の矛先となるべく、より一層の努力を重ねる所存であります」と挨拶した。
 挨拶で触れられた部品のほかにも、荷台の鉄板や欠落したメーター類、キャビンの木工部、車両正面の星のエンブレムなど、一から造り直した箇所は枚挙に暇がない。自衛隊において旧軍の車両を大がかりに修復する機会は滅多になく、修復チームの技官らは誰しもが初の試みであり、悩み、苦しみ、試行錯誤の毎日だったという。
 しかしそれだけに、修復担当者は、「今回得た貴重なノウハウは今後さまざまな旧軍関係の修復作業に生かすことができます。本当に得難い経験でした。大仕事を任された幸運に皆感謝しています」(修復チームの統括・板金担当:藤田尚人技官)と、大きな挑戦を乗り越えたことによる誇りを表情に浮かべ、感謝の気持ちを語っていた。
 霞ヶ浦と朝霞は近いようで遠い。手塩にかけた「愛車」を今度いつ目に出来るのか。そんな想いからだろう、式典終了後、100式鉄道牽引車の周囲には惜別の思いを抱き車両を愛おしげに見つめ優しく撫でる技官らの姿があった。


美保基地開放の日
スペシャルイベントのランウェイウォーク、航空機との綱引きも
 11月27日、航空自衛隊美保基地(司令・上田知元1等空佐)で「美保基地開放の日」が行われた。
 例年の航空祭では行われないスペシャルイベントとして、ランウェイウォークや航空機との綱引き等が行われた。約2・5?の滑走路を歩いたランウェイウォークは2回に分けて行われ、歩き終えるとうっすらと汗がにじむ程の陽気に「この時期に汗をかくと思わなかった」「思っていたより滑走路って幅も広くて、長いんだね」などと満面の笑顔の参加者。のんびりとした散歩のような雰囲気だった。C—1型輸送機やT—400型練習機との白熱した綱引きは、航空機が動くと大歓声が起こりガッツポーズ。
 「今日みたいなイベントもいいね、美保基地が身近に感じられた」と地元の人。今迄も多くの楽しいことをしている美保基地。この日も滑走路に航空機と並べて陸上自衛隊の車両を展示するなど美保基地らしい「基地開放の日」だった。

横須賀地区三自衛隊准曹
自衛隊記念日を祝う
回を重ねる毎に親密さ増す

 11月22日、「第4回横須賀地区三自衛隊准曹 自衛隊記念日 祝賀会」が横須賀セントラルホテルに於いて行われた。全国に先駆けて発足された陸・海・空の下士官達が集まるこの会も今年で4回目となる。回を重ねる毎に三自衛隊が和気あいあいとなって来ているのがよく解る。更に今年は、東日本大震災で10万人規模の自衛隊統合任務部隊(JTF)として三自衛隊が統合運用された事も三自衛隊の垣根を低くした理由のひとつ。実際に、災害派遣に関わった隊員も多く、「三自衛隊統合任務に入り易かった」のは、この会を経験しているからであろう。
 「三自衛隊が同じ目標に向けて、同じ思いを持ち自ら三自衛隊を率いる下士官になるためには、下士官同士の交流は重要、そのためにこの会を続けて行く」。
 統合任務を経験した隊員の言葉は、重たく力強かった。


出雲路を空から満喫
部外者航空機体験搭乗
出雲駐屯地

 出雲駐屯地(司令・岡本宗典2陸佐)は第13飛行隊(防府分屯地)の支援を受け、11月26日に平成23年度「部外者航空機体験搭乗」を実施した。当日は、日ごろから駐屯地に対し支援、協力している35名が搭乗した。
 先ず、広報室長のあいさつ、引き続き飛行隊による安全教育を行い、6個組に搭乗区分して、参加者待望のフライトへと移行した。
前日までの肌寒さが嘘のように温かく紅葉の美しい良く晴れた空の下、自衛官にとっては聞き慣れた低いローター音が駐屯地グラウンドに響き渡り、UH—1が離陸した。
 飛行コースは、まず、駐屯地から東へ出雲ドーム。そして進路は西へ。神西湖〜道の駅キララ多伎上空、続いて旋回して東に引き返し、日本海を稲佐の浜上空へと飛行して再び駐屯地グラウンドに戻るという約20分のフライトだった。
 いずれの搭乗者たちも郷土の景観を見下ろし空中散歩を満喫した。
 広報担当者は、「部外者航空機体験搭乗を通し、自衛隊及び駐屯地に対する理解と親近感を深めさせ、防衛基盤の拡充・発展を図ることができた」としている


隊内生活体験に協力
地元の2企業が参加
新発田駐屯地

 第30普通科連隊(連隊長・谷俊彦1陸佐)は11月1日から2日の間、北日本防災警備局(株)及び中央製版(株)合同による隊内生活体験に協力した。
 生活体験は自衛隊の基本動作や体力測定、非常呼集から始まる約12キロの徒歩行進等、限られた時間の中で休む間もなく自衛官さながらの生活を体験した。 
 生活体験者は団体行動の難しさや規律、団結の大切さを体感するとともに、統率・幕僚勤務の教育を通じ社会人としての責任感と基本マナーを修得した。部隊は、「自衛隊に対する理解と親近感を深めてもらう良い機会となった」としている。


『自ら学べ』
CRFで中級陸曹集合訓練

 中央即応集団(CRF)は、10月5日から同13日までの間、朝霞駐屯地で中級陸曹集合訓練を実施した。
 この訓練は、隷下部隊の中級陸曹に対して毎年行われているが、今回は東日本大震災における災害派遣や海外任務の教訓を活かし、長期間の天幕生活を常態化させるために宿営地を開設して行った。
 宿営地では、29名の被教育者と13名の教官・助教の全てが天幕で起居し、水は水缶からの補給、食事はすべて缶飯とし、PXの使用も制限、教育も天幕内の教場で行うなど、実戦さながらの管理方法だった。
 訓練隊長の中央即応集団最先任上級曹長小畑准尉の「自ら学べ」の指導の下、教育においては問題解決方法などの討議に重点が置かれ、実動訓練においても、被教育者グループに任務を付与して状況判断を要求する手法がとられた。
 最終訓練では被教育者を4個グループに分け、各グループに偵察任務を付与、25?の行進中に「心肺蘇生法」「車両整備」「無線機の取扱い」「化学剤の検知」「天幕の設営」「担架搬送」の状況を出した。
 被教育者は交代で班長を務めながらそれぞれの状況を判断、班員を指揮して任務を遂行することにより実員指揮能力を向上させた。被教育者は、現在自分達に不足している能力を確認するとともに、任務達成に必要な能力を認識することができ、状況終了時には、達成感に満ちた笑顔でお互いを称え合っていた。
 小畑准尉は、「上級曹長制度は平成25年度から施行されるが、曹士は陸曹が鍛える、俺たちが後継者を作る、との気概を陸曹全員が持ち、上級曹長が訓練を指揮し教官を上級陸曹が務める今回の教育要領が中央即応集団の曹士教育の指標となるだろう」と語った。


中央即応連隊でも
衛生指導者集合訓練

 中央即応連隊(連隊長・山口和則1佐)は10月17日から21日までの間、宇都宮駐屯地で『戦技指導者集合訓練(衛生)』を実施し、各中隊の衛生指導者約11名の練度確認を行った。
 この訓練は、連隊内の補助担架員に対して救急法などの練成を実施し、各中隊の衛生指導者として救急法教育ができる練度を維持することを目的とし、本部管理中隊衛生小隊が担当している。
 課目の選定については、「心肺蘇生法」「搬送法」「止血法」「ショックの処置」のほか実戦的な救急処置についての技術向上のため、「刺入物の固定(出血防止のための刺された刃物の固定処置)」「腸管脱出(体外に内臓が出た際の応急処置)」「フレイルチェスト(肋骨の骨折処置)」「ショック・熱中症に対する処置」など、衛生救護員が不在時においても、適切な救急処置ができることを考慮した。
 練度確認では、車両行動間の事故や戦闘間の負傷者の発生等、各種の実戦的な状況下で、医療資器材を用いた様々な傷病に対する救急処置を実施させた。
 これまでにも連隊では、実際に各中隊の衛生指導者が救急処置を実施した事例があり、この訓練の成果が発揮されている。連隊では引き続き、医療技術の進歩に伴う止血法や心肺蘇生法等の教育を継続的に実施し、衛生救護員や戦技指導者の練度及び指導能力の向上を図っていくとしている。


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