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   2006年1月15日号
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副長官、両政務官『新年の挨拶』 2面

イラク復興業務支援隊5次要員が出国
 イラク復興業務支援隊第5次要員(隊長・小瀬幹雄1陸佐以下100名=東部方面隊主力)の出国行事が1月6日、防衛庁A棟講堂などで行われた。派遣隊員は、隊員食堂で約半年間の留守を預かる家族と出国前の最後の会食を共にしたあと、森勉陸幕長、廣瀬誠陸幕副長、関口泰一陸幕防衛部長の激励を受け、一人ひとり固く握手を交わした。次いで、出国報告がA棟講堂で行われ、森陸幕長が「柔軟性」「イラクの人々の目線に立った支援」「肩の力を抜く」「安全確保」の4点を派遣隊員に要望した。引き続き、愛知治郎政務官、先崎一統幕議長をはじめ高級幹部、職員、家族ら関係者多数がA棟前儀仗広場に整列する中、全派遣隊員が堂々と行進(=写真)。花束贈呈、小瀬隊長の出国挨拶に続いて、全派遣隊員がバスに分乗、盛大な拍手に送られ、防衛庁をあとにした。

額賀長官『年頭の辞』
我が国の防衛に全身全霊で取り組む
 新年明けましておめでとうございます。平成18年の新春に当たり、全国各地で任務に従事している隊員諸官、また、イラク、クウェート、インド洋、ゴラン高原を始め、遠く南極にある砕氷艦「しらせ」の乗組員や、防衛駐在官等、世界各地で活躍中の隊員諸官に、敬意を表し、一言御挨拶を申し上げる次第であります。
 さて、昨年は、一昨年末に策定された新防衛力計画の大綱、及び新中期防衛力整備計画が適用される初年度に当たり、我が国の安全保障政策の大きな転換点ともなりました。まず、国外においては、一昨年末のスマトラ沖大規模地震及びインド洋津波や、昨年10月のパキスタン等大規模地震に際しての国際緊急援助活動、国内においては、昨年3月の福岡県西方沖地震、大型台風等による大規模災害の発生等に際しての災害派遣など、防衛庁・自衛隊の活躍は、国民の皆さん方から大変注目をされました。
 今日の安全保障環境は、2001年に発生した米国の9・11テロに見られるとおり、従来のような国家間における軍事的対立を中心とした問題のみならず、国際テロの組織などの非国家主体が脅威の対象として大きく注目されるようになっております。大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織の活動等、新たな脅威や、平和と安全に影響を与える多様な事態への対応が、今日の国際社会の差し迫った課題となっております。
 第一に、新たな安全保障環境の下に、米国との協力については、米国と共通の戦略目標を確認をし、抑止力の維持と、沖縄等の地元の負担の軽減の観点から、日米の役割・任務・能力、及び在日米軍の兵力構成見直しについて、米国と集中的に協議を進めて参りました。昨年10月末には、いわゆる「2+2」において、それまでの検討を取りまとめた共同文書を発表したところであります。これについて、昨年11月の閣議決定を受けたあとに、私は、全庁的な体制の下で、自ら先頭に立って関係地方公共団体を精力的に回り、理解と協力を得ることに全力を尽くしました。さらに、関係閣僚会議を設置し、政府を挙げて取り組むことにしております。今後は、本年3月の最終的な取りまとめに向けまして、日米協議を加速し、早急にその具体的内容を詰めるとともに、適時適切に、関係地方公共団体の皆様に御説明をし、誠心誠意理解を得る努力をしたいと思います。共同文書で示された個別の施設・区域に関連する施策が実現するように、最大の努力をしていかなければなりません。
 第二に、新たな安全保障環境の下で、国際社会との協力を重視し、安全保障環境の改善を図るとの観点から、国際平和協力活動に主体的、かつ積極的に取り組むことが重要であります。
 現在、自衛隊は、イラクの国家再建に向けた取組への協力を行っておりますけれども、先般、イラク人道復興支援特措法に基づく基本計画の派遣延長を1年間致しました。この派遣期間の延長に先立ちまして、私も昨年12月に、イラク及びクウェートを訪れ、隊員の活動を視察して参りました。隊員のみんなは、厳しい環境の中にもかかわりませず、高い士気と規律を保ち、活動に励んでおりました。イラクの人々をはじめ、広く内外から高い期待と評価を得ていることを確信を致しました。
 自衛隊は、このほかにも、インド洋におけるテロ対応のための活動や、ゴラン高原における国際平和協力業務など、国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組を行っております。新防衛大綱にも記述されておりますとおり、従来付属的な任務とされてきた国際平和協力活動を、いわゆる「本来の任務」とすべく、同活動の位置付けを含め所要の体制を整えることが不可欠であります。自衛隊による国際平和協力活動への取組は、我が国の国際平和に向けた取組を国際社会に対しまして、明確なメッセージとして伝え得るものであります。国際平和協力活動を行う隊員が、一層の自覚と誇りをもって職務に専念し得ることになると考えるのであります。
 同時に、防衛庁の省移行につきましても、昨年末に与党間において議論を開始させることができました。私としては、国防の重要性に鑑み、今後、政治の場で、この問題について国民の理解が一層深められる形で、早期に省移行の実現が図られるように、引き続き全力を尽くして参る所存でございます。
 第三に、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応していくために、新防衛大綱の「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」の体制を整備していくことが重要であります。本年3月には、統合幕僚監部、及び統合幕僚長を新設を致します。これにより、陸・海・空の自衛隊の一体的運用による、迅速かつ効果的な対応ができるよう、統合運用体制へ移行することとなります。この体制移行が円滑に実行され、統合運用をより実効性のあるものとすることが求められております。また、弾道ミサイル防衛につきましても、弾道ミサイル攻撃への対処に、より確実を期し得るように、将来の弾道ミサイルの脅威や、BMD関連技術の動向を踏まえながら、今後とも我が国のBMD能力の向上や、運用の在り方の検討に努めて参りたいと思います。
 第四に、防衛庁を、新たな時代の防衛を担う組織へと変換していくために、今年、内部部局をはじめとする防衛庁全般にわたる組織改編を行います。この改編は、防衛庁の歴史の中でも大規模な改編であります。新たな安全保障環境に対応し得るように、内部部局について、防衛政策、運用の企画、人材の育成、装備の取得、地方との協力など、幅広い観点から政策の立案及び実効機能などを強化し、まさに政策を担う政策官庁へと脱皮を図っていかなければなりません。装備品のライフサイクルを見据えた装備取得体制の構築をするために、契約、原価計算などの各機能を統合した装備本部を新設し、さらに、自衛隊地方連絡部に災害対策、国民保護など地方公共団体との協力関係をさらに構築していくための機能を追加し、その名称を自衛隊地方協力本部とすることなど、今まで以上に、防衛機能を果たし得る体制が整備されることと考えております。
 第五に、自衛隊医官が抱える早期退職問題に対応するために、今年、一部の自衛隊病院のオープン化や、防衛医学研究を開始いたします。自衛隊医官は、精強な自衛隊を支える要であるばかりでなく、イラクやインドネシアにおける活動、国内における災害派遣において、その主体となって活躍している一方で、医師としての技量の維持・向上に必要な臨床経験を得ることが困難であるという悩みを抱えております。自衛隊医官に「臨床」と「研究」の場を提供し、また、その活躍に相応しい高官ポストを創設する本年の事業は、自衛隊医官に対する自衛隊員全体からの期待の現れであります。
 最後になりますけれども、刻一刻と変化する国際情勢の中で、我が国が万全の防衛体制を保持するために、何よりも重要なことは、防衛の第一線にある諸官一人一人が、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つという任務の重要性と責任の重みを自覚し、厳正な規律を維持しながら、職務に精励することであります。諸官が、一丸となって本年も全力をもって職務を全うすべく努力されることを望みます。
 かつて、紀元前数百年も前に、時代の先駆者的な哲学者でありました孟子は、こういうことを言っております。「国、恒に亡ぶ。然る後に、憂患に生じて安楽に死するを知るなり」と。これは、内に代々規範を守る譜代の家臣や、君主を補佐する賢者がなく、外にも対抗する国や、外国からの脅威がない場合は、自ずと安逸に流れてついには必ず滅亡するというものであります。つまり、個人的にせよ、国家にせよ、憂慮の中にあってこそ初めて生き抜くことができ、安楽にふければ必ず死を招くということであります。私も、こうした先人の教えを胸に刻み、諸官とともに、我が国の防衛に全身全霊で取り組んで参りたいと考えます。
 全国及び世界各地の隊員の諸君、並びにご家族の皆様の益々の御発展、御健勝をお祈りするとともに、この一年が防衛庁・自衛隊の更なる飛躍の年となることを祈念し、年頭の辞と致します。(1月4日、全国放送で)

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