防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
スペーサー
自衛隊ニュース   1037号 (2020年10月15日発行)
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ノーサイド
北原巖男
Potential of Infinity

 「防衛ホーム」の読者の皆さん、コロナ禍が続く中、何か運動をされていますか?
 これまで僕は、「特に何にもしていないなぁ」と軽く受け流して来た回答者の一人でした。
 が、以前別の病気で命を救っていただいたお医者さまからレッドに近いイエローカードを受けてしまいました。加えて「意志を強く持って取り組んでください」の言。
 そこで始めた一つが早朝散歩。でも朝起きるときは、いろいろ理由を挙げて今日は行くのを辞めてもいいんじゃないかと誘惑するもう一人の自分の声との戦いです。心から信頼するお医者さまから受けた指導を忠実に実践するかどうかは、ひとえに患者自身の挑戦を続ける意志にかかっていることを思い知らされます。読者の皆さんにも心当たりがあるかもしれません。
 散歩コースについては、正に各人各様ですが、東京都世田谷区祖師谷在住の僕が試行錯誤の末見出した僕のゴールデンコースは、野川から次大夫堀公園の中を通り多摩川の土手までの往復です。多摩川の土手で仰ぎ見る東の空を赤く染めながら顔を出す朝日に包み込まれるときは、何か元気が湧いてくる瞬間です。夜が明けない夜はないんだなぁ・・・。
 そして目の前の河川敷の駐車場。ズラッと並んだ大小のダンプトラックが既に出発準備をしています。エンジン音を響かせている全てのダンプトラックの荷台の先頭いっぱいに、流れるような綺麗な書体で書かれている文字は、Potential of Infinity。「無限の可能性」と理解します。
 ダンプトラックを所有する会社は、この英語のイニシャルを取って会社名にしている由ですが、積載する残土等にも無限の可能性があるんだというアッピールでしょうか。
 工事現場等で逞しく働き続けるダンプトラックのこのメッセージは、街を行く老若男女全ての人々に向かって、自らの可能性に対するそれぞれの挑戦にエールを送っているようにも思えます。自分の可能性はほとんど無い、もうダメだ、なんてそんな簡単に決めつけるなと訴えているようにも見えます。
 こんなとき、駐米大使を務められた栗山尚一氏の夫人から勧められた本が、「シークレットサービス レーガン大統領の命を救った男」(ジェリー・パー著 立花昌雄訳 中央公論新社 2020年8月発行)。著者は、シークレットサービスの一員としてレーガン大統領はじめ歴代の大統領や副大統領等の警護を担当。昭和天皇皇后両陛下の初訪米の際には、訳者の立花昌雄氏と警護任務に取り組まれた方です。著書の中には、「もし警護官が崇拝の目で警護対象を見てしまうと、その人は暗殺者が潜んでいるかもしれない人混みの方に目をやらない。私がいつも言っていたのは、警護官が「大統領万歳」の声を聞き、目がうっとりとし始めたら、異動の時であるということだ。」、「(ハンフリー副大統領)夫妻にとって、私たちは人間であり、仕事をする調度品ではなかった。」等、印象に残る記述や発見に溢れています。
 僕が驚いたのは、訳者の立花昌雄氏。氏は、警察官僚ですが、今から40年以上前に当時の防衛庁に出向され、防衛局調査第一課長として活躍された方なのです。
 前述のように、かつて一緒に昭和天皇皇后両陛下の警護を担当したジェリー・パー氏が書かれた一代記を、「何よりも警護官魂といったものに感動しつつ、読み終えた」立花氏は、「要人警護に関し、わが国警察の参考になる点もあろうかと翻訳することを思い立った。・・・以来5年余、素人仕事から何回にもわたる書き直し・・・新型コロナ死適齢期の八十四歳の今、どうやら日の目を見る運びとなった。」訳者あとがきでの述懐です。
 駐米日本大使館勤務があるとはいえ、英語や翻訳の専門家でない立花氏が、300ページを超す大作を翻訳しきったのです。5年余かけて懸命に取り組まれ、出版にこぎ着けられた立花昌雄氏のPotential of Infinityと頑張り。読後感は真に爽やかです。
 栗山夫人曰く「立花さんのとても綺麗な日本語訳へのご尽力を通じ、警護官の皆さんの気概に日が当たりました。これは、自衛隊の皆さんの日々の活動、特に国を守る気概に呼応するのではないでしょうか。」

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


令和2年度 第1回心突然死対策講習
適切なチーム蘇生を習得
<自衛隊札幌病院>
 9月26日、自衛隊札幌病院(病院長・大鹿芳郎陸将)は、副院長の菊池勇一陸将補を担任官として、自衛隊中央病院、第11旅団、北部方面衛生隊の支援を受け、今年度1回目の日本救急医学会ICLSコースを開催した。
 本講習は、「突然の心停止に対する最初の10分間の適切なチーム蘇生を習得すること」を目標として、認定コースディレクター吉積1佐(先任診療科部長)、本間2佐(小児科部長)以下指導要員17名が、医師・看護師・救急救命士等、院内及び各部隊の受講生12名に対し「心肺停止の認識と対処行動」「BLS(一次救命処置)」「AED(自動体外式除細動器)の安全操作」「心停止時の4つの心電図波形診断」「状況と各自の技能に応じた気道管理法の選択・実施及び確実な気道確保」など実技を主体とした体験型シミュレーションにより指導を行い、最後に心肺蘇生法、心突然死対処等に関する実技試験を行い識能の維持・向上を図った。
 修了式において担任官は、「習得した技能をいつでも発揮できるよう練度の維持・向上に努めてもらいたい」と訓示し講習を終了した。

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