防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
スペーサー
自衛隊ニュース   1019号 (2020年1月15日発行)
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ノーサイド
北原巖男
最前線での情報戦
 ティモール島は、ティモール海を隔てオーストラリアと対峙する小さな島です。
 1941年12月8日、真珠湾攻撃を機に太平洋戦争が始まるや、オーストラリア・オランダの連合軍は、12月15日には中立国のポルトガル領ティモールを予防占領し、ティモール島全島を占拠しました。これに対し日本軍は、翌年2月、すぐに連合軍を排除し、終戦まで全島を占領しました。日本軍が配備したのは、当時3つしかなかった自動車化師団2万人。この師団は、常に激戦地で先陣を切る日本軍の虎の子部隊でした。ティモール島が日本にとって極めて重要な最前線であったことを示しています。
 1943年9月、住民の通報により、オーストラリア軍の偵察要員5人を拘束しました。無線機や暗号書、通信記録も取得。これが最前線での情報戦の始まりです。師団通信隊では、早速「逆無電」の作業を開始しようとしました。古参の隊員が言いました。「打電には手クセや速度がある。いつもと違うものを見ると違和感を感じ疑義を持つかもしれない」。そこで一計を案じました。電文末尾に「缶詰を開ける際手指を傷つけてしまい発信意の如くならず」と入れることにしたのです。さらに無線隊長は、電文案に「日本軍作戦道路はダラバイ北方4キロの拠点まで完成」と書き加えたのです。みんな驚きました。これは機密事項ではないか。隊長は言いました。「ほんとのことを後に一つ入れておいてやると、前に書いてあることも本当のことになりやすいものだ」そしてそのまま祈るような気持ちで打電。キャンベラとの時差を忘れるという信じられないミスに肝を冷やしましたが、効果はてきめんでした。オーストラリア側は、全く信じてしまったのです。その後も、ニセ情報を慎重が上にも慎重を期しながら、ほんの少しの真実を混ぜてドンドン送りました。
 戦果はいろいろあります。新しい偵察隊のティモール島上陸を待ち伏せて拘束したり、空き家を爆撃させたり、投下要請した医薬品や食料、原住民宣撫用の人形、衣類、慰問袋等大量の品々を接収することも出来ました。現地では「豪州給与」と呼んでいました。
 その中でも最大の功績は、ティモール島に兵士や補給物資が大量に投入され軍備が増強されていると誤認させたことでした。
 巷間伝えられるところによりますと、この情報を信じてしまったマッカーサー司令部は、反転上陸の地点を、大軍集結するティモール島を避けレイテ島に移すことにしたと言われています。
 そして終戦。直後に接収に当たった英豪軍担当官が着任。彼らは信じられませんでした。
 最大10万〜15万とふんでいた軍隊がどこにもいないのです。目の前にいるのは桁ちがいに小さい約1400人の人員だけだったからです。
 すなわち最前線ティモール島での情報戦は、日本軍の完全勝利で終了したということを認識させられた瞬間だったのです。
 昨年12月27日の閣議決定を受け、中東地域での日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化するため、海上自衛隊のP-3C哨戒機2機と護衛艦1隻(2月に出航するのはヘリコプター搭載護衛艦「たかなみ」)が任務に就きます。
 日本は原油輸入の9割近くを中東に依存しており、ホルムズ海峡を通過する日本の海運会社が運航する船舶は年間約3900隻。バブ・エル・マンデブ海峡は年間1800隻と言われています。まさに日本の経済活動の生命線を握る最前線での情報収集活動です。
 安全確保に万全を期し、卓越した統率の下、任務の完遂を祈念して止みません。
(参考文献)
「輝け南の島の知謀戦 ティモール島星空の勇者たち」(山口重晴著・2003年5月新風舎刊)「チモール島の楠木正成」(三浦重介著・「文芸春秋」1961年9月号)
 
北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事

働き方改革推進のための取組コンテスト
 防衛省・自衛隊では、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の一層の推進を図り、業務の効率化や職場環境の改善を行った部署・部隊を表彰する「働き方改革推進のための取組コンテスト」を昨年に引き続き実施した(今年で4回目)。
 令和元年12月19日に副大臣賞、同年12月20日に大臣賞(岩田政務官代理)の表彰を行った。
 今年は、計52件の応募があり、それぞれ独自性(特徴のある取組)、継続性(継続させるための工夫)、効果(効果の明確性)、展開性(他の部署への発展性)の観点に基づいて選考された結果、大臣賞(1件)、副大臣賞(2件)が決まった。
 大臣賞には、陸上自衛隊那覇駐屯地業務隊が選ばれ、12月20日に岩田政務官室で表彰式が行われた。概要は、次のとおり。
 「防衛省として働き方改革が推進されている中、慢性的な超過勤務による心身の疲労に起因する生産性の低下を未然に防止し、仕事上の責任を果たすことと家庭や地域活動とのバランスを保持するため、良好な人間関係、早く帰る、働き方を変える、人生を変えることを目的とした『カエル会議』の設置、夏休み等に家族を職場へ招待し、親の職場環境等の見学や同僚を紹介する等、親近感の醸成と不安の払拭、隊員自らが計画的に勤務環境(部屋換え、隊舎塗装、絨毯の張替え)の改善の実施、育児休業者の業務を補完するための『となり組』を編成し、業務のサポート態勢の確立等、様々な取組を実施した。その結果、各隊員のWLBに対する意識や互いを尊重し意見交換しやすい環境が醸成され、やりがいと充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすことと家庭や地域活動の両立を図る環境が構築された」
 大臣賞に先立つ19日には、副大臣室で副大臣賞の表彰式も行われ、陸上幕僚監部運用支援・訓練部及び海上自衛隊第1輸送隊が表彰された。
 陸上幕僚監部運用支援・訓練部の概要は、次のとおり。
 「月平均超過勤務時間が陸幕平均よりも多いことから、意識の改革を促すとともに超過勤務時間の目標(月平均60時間以下)を定め、その達成に向け、会議時間短縮等の業務の効率化、勤務時間、代休、年次休暇の取得状況見える化、また、超過勤務時間によりイエローカードやレッドカードを付与してPCモニター上に掲示する等の取組を実施した。その結果、目標を達成し、また、超過勤務の縮減により、健康・休養、学習・趣味、地域活動、家庭生活等の生活の充実が図れた」
 海上自衛隊第1輸送隊の概要は、次のとおり。
 「平成30年4月に設置した『第1輸送隊働き方改革推進委員会』において、様々な工夫によりワークライフバランスを推進しているところ、更なる強化のため、各種休暇制度の概要を列挙したワラビーチェック表の配布、休暇取得促進のためのワラビー計画表の作成、職場見学・家族新聞発行による隊員家族に対する啓蒙活動及び毎月19日を「イクメンの日」と制定し、男性隊員の育児参画促進を図った。その結果、停泊日におけるフレックス希望者(158名)の活用率及び「ゆう活の日」に指定された日のゆう活実施率は、ともに100%となり、また、育児参画に係る意識の向上が図られた」

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