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自衛隊ニュース   918号 (2015年11月1日発行)
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相模湾沖で自衛隊観艦式
受閲部隊、雄大で正確無比な航行
 10月18日、雲一つない秋晴れの下、自衛隊最高指揮官・安倍晋三内閣総理大臣を観閲官に迎え、「平成27年度自衛隊観艦式」(実施責任者・武居智久海上幕僚長、執行者・重岡康弘自衛艦隊司令官)が相模湾沖で実施された。艦艇42隻、航空機37機が参加。米、豪、仏、印、韓の5カ国海軍の軍艦も祝賀航行で花を添えた。
 安倍総理が座乗する観閲艦・護衛艦「くらま」を中心とする観閲部隊の左前方から一糸乱れず航走してくる受閲艦艇部隊。艦艇種別8グループに区分された20隻以上の艦艇が次々と眼前を通り過ぎる様は圧巻の一言だ。ミサイル防衛を担う旗艦・護衛艦「あたご」。帝国海軍時代から途切れる事無く部隊の歴史を紡ぐ掃海部隊。テロ特措法によりインド洋で給油活動に従事した補給艦「ましゅう」。統合作戦での活躍も期待される輸送艦「おおすみ」の甲板にはこの日も、12両の陸自車両と22名の陸自隊員の姿があった。海自最大の護衛艦「いずも」は最大運用数5機の航空機を搭載し、その巨大な勇姿を初めて観艦式の場に現した。
 息つく暇もなく無数の艦艇を見送った後、引き続き、左後方から受閲航空部隊が飛来。今年度から正式運用を開始、初参加の最新鋭哨戒機P—1の勇姿が頼もしく映り、練習機TC—90の赤い塗装に燃え盛る青雲の志を思う。輸送・掃海・救難などの任に当たるヘリ部隊を目にした見学者からは、「先日の関東・東北豪雨の災害派遣でも活躍した21空群のSH—60を見ることが出来て感激した」(20代・会社員)との声も。同じく先の豪雨災害に派遣された部隊を含む陸自ヘリは輸送ヘリと戦闘ヘリの異機種編隊。空自F—2、F—15は轟音を残し高速で過ぎ去った。空自からは第11飛行隊"ブルーインパルス"も参加。精緻かつダイナミックな飛行展示により大空に無数の夢を描き、式典の最終盤を鮮やかに彩った。
 高波をものともせず多数の艦艇が一斉に反転する回頭により、艦艇が雄大かつ複雑に動く様を乗艦者が体感した後は訓練展示。高速で疾走するミサイル艇やLCACに息を呑み、艦長以下が息を合わせ巨大な船体を自在に操る3隻の護衛艦、潜行・浮上を繰り返した潜水艦の見事な動きには惜しみない歓声と拍手。P—3Cの対潜爆弾発射など、爆薬を使用した課目を目にすれば自ずと緊張の色が見学者の顔にも浮かんでいた。
 我が国の安全保障環境が厳しさを増す中、更には、国内外で多発する災害派遣や海賊対処など国際協力等も加わり多様化する海自の任務。その現状が、多種多様な艦艇や航空機が参加した観艦式からも見てとれる。今回は、前回観艦式にも参加した米豪に加え仏・印・韓の計5カ国の軍艦が祝賀航行を披露した。受閲航空部隊として米海軍P—8A、米海兵隊MV—22も参加し、観艦式会場付近には米海軍空母ロナルド・レーガンの姿もあった。海自—各国海軍の二国間・多国間の共同訓練は近年増加傾向にある。「私の現役時代には考えられない任務の幅広さ。多忙で緊張感ある毎日を送る後輩達には頭が下がります」(70代見学者・海自OB)。
 観艦式の最後に、安倍総理は訓示の中で「大海原の真ん中にあって波濤をものともせず、正確無比なる『海の防人たち』の勇姿を目の当たりにして感激もひとしおです」と参加部隊を讃えた。崇高な使命を帯び、広大な海と空に生きる海自隊員。日頃は国民の目に触れることのない場所で様々な脅威に向かいあう彼らを総理は、風雪に晒されてもなお、青々と繁る松の木のようだとも評した。古くから防潮林として全国の海岸に植林された歴史を持つ松。海を護る誇りを抱く彼らにこそ相応しい。中秋を迎え、漆黒の制服に身を包む隊員たちの背中がいつも以上に大きく、誇らしく思えた。

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