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自衛隊ニュース   2012年2月15日号
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豪陸軍がYSオブザーバー初参加
日米豪3カ国の協力関係強化へ
南スーダン派遣隊員に情報提供も

 平成23年度日米共同方面隊指揮所演習(YS—61)が1月24日から2月6日に伊丹駐屯地等で実施され、両国の相互運用性や共同対処能力の向上を図った。今回はオーストラリア陸軍が初めてオブザーバーとして参加。防衛白書では豪州を「わが国にとってアジア太平洋地域の重要なパートナー」と位置づけており、同地域に重点を移す米国との連携も踏まえて、3カ国間の協力関係を強めた。また、豪陸軍第1副師団長による陸幕長とCRF司令官の表敬訪問やUNMISS派遣経験者による南スーダンに関する講話が行われた。

陸幕長「オブザーバー参加は歴史的第一歩」
 2月2日、豪陸軍第1師団副師団長のサイモン・ドン・ローチ准将らが君塚栄治陸幕長を表敬訪問した。日本側は久納陸幕副長、森山防衛部長、岡部教訓部長、笠松国際防衛協力室長などが同席した。
 君塚陸幕長は懇談の中で、「日米豪3カ国の協力関係は日々深化している」と話し、YSへの豪軍のオブザーバー参加について「防衛協力・交流分野における歴史的第一歩」との認識を示した。
 ローチ准将はオブザーバー受け入れに対する謝意を表すとともに、「各種分野での調整要領や荒川中方総監とワーシンスキー米太平洋陸軍司令官の良好な関係を見て、日米の強固な協力関係に基づく作戦能力の成熟を実感した」と述べた。
【CRF司令部を訪問】
 陸幕長表敬を終えたローチ准将は同日午後、豪陸軍フォースコマンド人事能力管理将校のクレッグ・デレーニー中佐とともに中央即応集団(CRF)司令部を訪問した。ローチ准将のCRF司令部訪問は今回で2回目。
 はじめにローチ准将は山本洋CRF司令官を表敬し、豪陸軍第1師団の特性や海外における任務への取組みなどを説明。山本司令官は、東日本大震災におけるギラード首相の被災地訪問や豪軍からの被災者支援に対して謝意を示すともに、日豪の防衛交流の重要性を話した。

UNMISS経験者が体験談交えて講話
 引き続き、国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)、国連スーダンミッション(UNMIS)、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)などに派遣経験のあるデレーニー中佐から、南スーダンの状況に関するブリーフィングが行われた。南スーダンでは兵站・通信・衛生面等が課題で、状況の変化に対する柔軟な姿勢が重要であると指摘。このブリーフィングには、南スーダン派遣施設隊長の坂間輝男2陸佐(中央即応連隊)も参加して熱心に質問するなど、日豪の防衛交流を実のあるものとした。

【施設隊2次要員も聴講】
 デレーニー中佐は翌3日、北部方面総監部に向かい、南スーダン派遣施設隊の2次隊の主力となる北部方面隊に対しても講話を行った。UNMISSの活動や南スーダンの首都ジュバの生活環境など現地の状況について話され、第2次派遣要員を含む約60名が聴講した。
 その中でデレーニー中佐は、換金における諸注意やスコール時の対応の仕方、車の運転でウィンカーを出す習慣がないことなど、現地での生きた知識を提供した。特に「虫はつぶすと体内の毒で皮膚の炎症を発生させる」「水はペットボトルのみ。ふたの置き方にも注意し、地面に落ちたものは食べない」といった衛生面の注意事項について、体験談を基に強調した。
 また、現地における調整要領について「ちょっとしたお土産でコミュニケーションをとって」と聴講者にコアラのピンをプレゼントして場を和ませながらアドバイス。現地で指揮官として活動したデレーニー中佐の説得力ある話で、予定時間を超えてしまうほど充実した講話となった。


司令部に施設幕僚派遣
UNMISS

 国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の司令部に施設幕僚として派遣される新井信裕1陸尉に2月3日午前、田中直紀防衛大臣から辞令が交付された。田中大臣は「平和と安定の定着及び南スーダン共和国における発展のための環境の構築に貢献することは、我が国が国際社会の責任ある一員として、国際平和と安定のために一層の義務を果たすものであり、極めて重要な意義がある」と述べるとともに、「日本の代表として頑張って」と激励の言葉をかけた。同日午後には、防衛省での見送り行事が岩?統幕長や君塚陸幕長などが列席するなか行われた。新井1尉は「日本の代表として恥じぬよう、失敗を恐れず、積極的に任務に取り組む」と出国報告。これを受けた岩?統幕長は「十分に今まで培った技量・能力を発揮していただきたい」と述べた。
 新井1尉は2月6日に出国し、ウガンダで研修を受けた後、UNMISS司令部のある南スーダンの首都ジュバに向かう。派遣期間は7月31日まで。


山本CRF司令官が着任
心構えは「我らここに励みて国の魁たらむ」

 1月31日、中央即応集団(CRF)司令部儀仗広場において山本洋CRF司令官(陸将、前職は富士学校長)の着任式が行われた。CRF隷下各部隊指揮官や司令部勤務者など約200名が参加しての着任式は、東方音楽隊による栄誉礼から始まった。
 着任の辞として「一度命令が下ったならば、国内外を問わず迅速かつ的確に対応することが求められている。このことは、先般の東日本大震災でも明らかであり、今まさに活動を開始したばかりの国際連合南スーダン共和国ミッションへの部隊派遣においても同様である。必ずやその任を全うできるものと確信している」「高い専門性・特殊性を備えた我が国唯一の機能を有するCRFのライバルは、世界各国の軍隊であり、我々が最終的に目指すべきは『世界最強』である。それを可能ならしめるものは平素の地道な鍛錬以外にはない」などと語った。
 次いで記者会見が行われ、質問に丁寧に回答する山本司令官の姿が印象的だった。

山本司令官・記者会見要旨
Q 海外派遣の役割が増すなかでの抱負。
A 海外派遣が本来任務となり、設立目的が意義に変わり、海外派遣をふまえた部隊であるので、我が国の国益に合致した形で政府の研究した様々なミッションに全力で向かう。
Q 首都直下地震が心配されているが。
A 例えば原子力災害ではCRFが持っている力を存分に発揮したと思うが、自衛隊だけで対応しているわけではなく、それぞれの関係各機関と連携をとって現在持っている力を存分に発揮できるような態勢をしっかりとり続ける。
Q 各隊員に望む事。
A 部隊毎に、部隊の任務・隊員の職務がある。隊員の持つべきレベルは明確だから、さらにレベルアップをして自分に与えられたものを最大限発揮し、隊員は個人としてのレベル力、部隊は組織力として発揮できるように鍛錬すること。
Q 統幕運用について。
A すでにPKOなどで統合任務をしている。統合は自衛隊全体としての任務達成のため避けて通れない。統合なくして任務達成はあり得ない。確立したことも沢山あるが、まだまだ課題がある。統合教育としても努力が必要。初級幹部レベルの大きなオペレーションだけでなく個々の一つ一つの地に足がついたレベルの統合や3自衛隊がお互い理解しあい正しく知るよう、一つ一つのミッションをこなす中で取り組んでいく。
Q 海外も含め活動している隊員の家族に対しての対応。
A 陸自にPKOを与えられて20年になるが、改めてクローズアップされている。陸幕には家族支援班があるが、陸自として真剣に取り組まないといけない重要なこと。本来とても大事なことだが、まだ目が向いていない、見ていなかった、体力をさけなかった、さいてこなかった部分もある。東日本大震災の場合、ライフラインは閉ざされ、被害は受ける、連絡はとれない状態では、留守家族同士が助けあうしかない。災害派遣に出て行った隊員も家族のことを心配しながら従事している。最小限家族の安否位は伝えなくてはいけないが、まだまだ努力の余地の多い分野。国内だけでなく海外でももっと家族とのコミュニケーションをとるなどしないといけない。海外などにいくのがCRFの任務だから、そのような家族支援業務は充実させて、任務に就く隊員も家族も支えないといけない。実態を把握して処置していきたい。


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