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   2006年5月1日号
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2面からつづき
Q 統合運用が実現されるに至った最大の理由はなんですか
A 国際社会の中での日本の役割の増大、安全保障環境の変化、自衛隊に対する国家・国民の期待、自衛隊の運用実績の積み上げ、そして政治的情勢といった要因が、統合運用の必要性というものをクローズアップさせ、内外の幅広い層の中で支持を得られた結果だと考えている。

Q 統合運用態勢に移行することで、自衛隊の運用の実態はどのように変わるのですか
A 〈長官との関係〉
 (1)自衛隊の運用に関する軍事専門的見地からの長官補佐の一元化
 (2)自衛隊に対する長官の指揮は、統合幕僚長を通じて行われる。
 (3)自衛隊に対する長官の命令は、統合幕僚長が執行する。
〈統合幕僚監部と各幕僚監部との関係〉
 運用は統合幕僚監部、防衛力整備・維持は各幕僚監部となる。運用に当たっては、統合幕僚長が各幕僚長からの運用上の助言を得ることができ、各幕僚監部は運用を支援する機関となる。
 〈部隊との関係〉
 (1)運用にあたり、命令・指示・報告等は一義的に統合幕僚長・統合幕僚監部が実施する。
 (2)統合部隊や統合任務部隊を編成する場合には、統合幕僚長から具体的な指示等を行う。

Q 自衛隊の運用を統合幕僚長に一元化させることによって生じるメリットはどのようなものですか
A 具体的効果としては次のとおり。
 (1)統合幕僚長に情報が集約され、統合幕僚長に情報が集約され、統合幕僚監部において一元的に対処構想が検討されるため、統合幕僚長、ひいては長官の情勢判断や意思決定、長官の命令・支持の発出の迅速化が図られる。
 (2)統一された作戦構想に基づき、当初から一体的な部隊運用を行うことで、不審船等の、急激に事態が拡大する恐れがある事態に対しても、より効果的に対応することが可能となる。
 (3)更には、将来的には、統合運用に必要な装備品の調達コストの削減といったことにもつながっていくものと考えられる。
 (4)自衛隊が統合運用を基本とする米軍と共同作戦を実施する場合、自衛隊側の調整窓口も一本化されることから、自衛隊と米軍で、より緊密な連携を図ることができる。

Q 自衛隊の運用はすべて統合幕僚長を通じて行うのですか、各幕僚長を通じて行う場合もあるのですか
A 自衛隊の運用の範囲は、自衛隊法第6章に定める防衛出動、治安出動、災害派遣、対領空侵犯措置等の行動や、自衛隊法第8章の「雑則」に定める国際緊急援助活動、国際平和協力業務、在外邦人等の輸送等の活動が含まれる。
 自衛隊法第8章にある土木工事等の受託については訓練の一環であるとの解釈から、各幕僚長の権限とするものの、運動競技会や南極地域観測に対する協力など省庁間協力・民生協力についても統合幕僚長の権限として整理している。
 さらに、これらの行動においては、2以上の自衛隊を運用する場合のみならず、1自衛隊を運用する場合であっても、これらに関する長官の補佐についてはすべて統合幕僚長が行うことになる。

Q 部隊レベルでの統合はどの程度進みますか
A 任務別、地域別そして機能別に自衛隊の部隊の常設的な統合化について見当を行ったところ、通信機能の一部統合化を除き、現体制を保持することが有利であるとの結論を得ている。その理由は、現体制を保持したほうが様々な任務に対し、各自衛隊のそれぞれの特性に応じた部隊運用を迅速に行うことが容易ということがある。
 他方、米軍の地域統合軍が担当している作戦地域と比べると、自衛隊の作戦区域は極めて狭く、これをさらに細分化することは全国レベルの運用を常態としている海上自衛隊や航空自衛隊に指定して、陸・海・空自衛隊の部隊をもって事態生起に対処することを基本とし、各自衛隊の主要部隊の司令部機能や情報通信基盤を充実・強化することが必要である。

Q 統合幕僚監部の新設に伴い、統幕と各自衛隊の主要部隊間の通信連絡はどのように確保しますか
A 統合幕僚監部と各自衛隊主要部隊間の通信連絡の確保は、統合運用の実効性を確保する上で、極めて重要であると考えている。
 統幕と主要部隊司令部間の通信連絡手段は、総合電話・FAX等があるが、これらに加えて、Web技術を活用したデータ連携機能を追加している。
 また、統幕と各自衛隊主要部隊間でメール交換が可能となっている。
 今後の方向性として、22年度以降は中央指揮システムの本格的な改修を効果的に実施するとともに、各自衛隊の指揮システムの改修・換装にあわせて相互連接性を向上させ、統合運用のためのインフラ整備を推進していく必要がある。

Q 統合幕僚監部は防衛力整備にどこまで関与するのですか
A 防衛力整備については、統合幕僚監部が統合運用ニーズを明らかにした上で、各幕僚監部が実施していくことで考えている。
 したがって、各幕僚監部が実施する防衛力整備に関して、統合幕僚監部として統合運用上の意見を反映できる枠組みを構築した。

Q 統合幕僚監部と各幕僚監部の訓練区分はどのようになっていますか
A 統合幕僚監部は、長官が定める方針に基づき統合運用による円滑な任務遂行を図る見地から「統合訓練」を計画・実施する。
 陸上、海上、航空幕僚監部は、長官が定める方針に基づき統幕の作成する「中期(年度)統合訓練計画」を踏まえ、部隊及び個人を練成する訓練を計画・実施する。
 なお、各自衛隊の訓練(YS、海演等)には、各自衛隊が他自衛隊と協同して行う訓練が含まれているが、これらの訓練においても、近年、統合運用の演練場面が増えてきており、各自衛隊の訓練においても統合運用能力を向上するための訓練が計画されることは、推奨されるべきことであると考えている。
 右記訓練は、いずれも運用と密接不可分なものであり、長官の方針は、運用上の所要を訓練全般に反映するため定められるものである。自衛隊の運用をつかさどる統幕は、訓練の方針の策定に当たって長官を補佐する。

Q 統合幕僚長の人事権の内容や範囲はどのようなものですか
A 統合幕僚監部に対しては、従前の統合幕僚会議及び統合幕僚会議事務局長が有していた補職、任免、懲戒、表彰に関する権限を

統合幕僚長が踏襲する。
 運用下の部隊に対しては、表彰及び懲戒の権限が付与され、さらに運用上必要な場合、補職、任免についても関与する権限が付与された。具体的には、当該案件について長官に意見を述べることである。

<論陣>
靖国参拝を外交の道具にするな
=中国・韓国両首脳の発言に対して=
 「日本の指導者が靖国神社にこれ以上参拝しなければ、首脳会談をいつでも開く用意がある」=胡錦濤中国国家主席=。「小泉日本国首相は靖国神社の参拝をやめるべきだ。日本は歴史教科書検定問題で深く反省せよ」=盧武鉉韓国大統領=。中韓の国家主席が、ことあるごとに発する言葉である。
 神社詣でと外交。それほど国の運命にかかわることだろうか。話し合えば解決することと思っているのは、ほとんどの日本人である。両国とも国内に充満している庶民、大衆の不満を外部に向けることで『不満のガス抜き』をしているのではないかと疑いたくもなる。確かに中国では景気過熱による貧富の格差が日を追うごとに高まっており、追いかけるように消費税の増額、役人の汚職のはびこり、民族独立などの諸問題が山積み、中央、地方政府への人民大衆の不満、怒りは高まっている。また韓国は産業不振、雇用問題など当面解決しなければならない諸問題があるのに解決への道は遅々として進んでいない。そうしたことに対して「反日」を叫ぶことで一時的に先のばしして政権の延命を図っているのかもしれない。
 「靖国を槍玉にあげておけば日本は弱腰になり、自国の主張が有利に展開できる」。その理論武装ぶりが見え見えであるのを中韓両国の指導者は気付いていないのだろうか。
第一、靖国神社の生い立ちを両国の指導者は、はっきりと理解しているかが疑問である。  
A級戦犯の合祀の是非には国民の意見は二分している。しかし、靖国神社そのものの存在は認めているのが現実である。
 東京・九段坂上にある靖国神社(1869年創立)は国事にたおれた人々の霊が祀られている。百科事典などの資料によると明治維新前後の殉難者をはじめとして佐賀の乱、西南戦争、日清戦争以来、第二次世界大戦での戦死者約250万人の霊が合祀されており、この中には従軍看護婦や第二次大戦時に生命を失くした女子挺身隊員なども含まれている。神社地は大村益次郎の選定で、はじめは東京招魂社といわれたが、1879年に靖国神社と改められた。毎年4月22日から25日までの春季例大祭と10月17日から5日間の秋季例大祭の2回の大祭があり、両大祭には天皇陛下の御使いとして勅使の参拝(参伺)がある。歴代の首相では中曽根康弘氏が内閣総理大臣として公式に参拝し、神社の参拝帳に記帳した。以後、総理大臣で参拝するものは「記帳」するのが、ならわしのようになっている。
 さる3月31日、橋本龍太郎氏ら日中友好7団体の代表が北京を訪れた際、胡主席は、再び日本側に「日本の指導者がこれ以上、靖国神社に参拝しなければ、日中首脳会談をいつでも開く用意がある」と発言した。この発言の意味は"小泉首相あて"の形をとっているが、実は「そうではなく、ポスト小泉の人物に言っているのだ」という見方が一般的である。というのは小泉首相の任期は、ことしの9月で終わる。10月17日の例大祭当日には小泉氏は内閣総理大臣ではなく、ただの一代議士になっているので、秋の大祭には自由に参拝できるのである。それ以前に参拝するとなると8月15日の終戦記念日ということになる。いまの雰囲気では、あえて"強行する"可能性はうすい。胡主席の発言は次の内閣総理大臣を念頭に置いての"警告"というのが識者の一般的な見方である。
 このことについてポスト小泉の最有力候補と見られている安倍晋三官房長官は「政治目的を達成するために会わないというのは間違っている。国のために殉じた方々に手を合わせて冥福をお祈りする気持ちは持ち続けていきたい」と参拝路線を進む姿勢。麻生太郎外相も「問題があるのなら、両首脳が話し合うのが大切だ」と外国と靖国は別との立場をとっている。
 このたび民主党代表になった小沢一郎氏は「戦争で亡くなった人のみの霊を祀る本来の姿に戻して天皇も首相も堂々と参拝すればいい」と語っている。同氏は「A級戦犯といわれる人たちは戦争で死んだわけではない」と合祀には否定的だ。多くの意見が出る中で靖国神社問題は、これから様々と形を変えながら「日本国内で定着した結論」が生まれるものとみられる。外交や国際政治の具にだけはされたくないものである。

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