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   2005年9月15日号
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<防衛庁>
「環境川柳」に応募2万3千点
グランプリ、最優秀作品を表彰
 防衛庁は、環境省が定めている環境月問(6月)の趣旨を踏まえ、▽川柳の募集▽講演会の開催▽低公害車の展示▽パネル展示▽コンサート開催▽市ヶ谷エコツアーの実施▽直営売店(デイリーヤマザキ)に環境コーナーを設置などの各種行事を展開してきた。
 この中の「環境川柳」募集には、これまでで最高の約2万3千点の応募があり、NHK学園の大木俊秀氏らが厳正に審議した結果、平成17年度の最優秀1点、優秀3点、佳作8点が選出された。また、防衛庁環境月間を設置して今年度で5周年になることから、過去の最優秀賞5点からクランプリ1点を選出した。
 大野功統長官は8月26日、大臣室で西川徹矢官房長、西山正徳参事官をはじめ高級幹部が陪席する中、グランプリ、最優秀、優秀賞に輝いた5名に対して表彰状を授与した。
 ※受賞作品は次のとおり。
 〈5周年グランプリ作品〉山内昌宏3海佐(第211教育航空隊)
 「捨てられたモラルを拾うボランティア」
 心ない人たちがところかまわず捨てて去る瓶や缶や弁当殻そしてタバコの吸い殻。大きいスケールのものになると産業廃棄物まで素知らぬ顔でごっそり。これらを「捨てられたモラル」ととらえたところがこの句の手柄です。しかも「捨」に対して「拾」を配し、その拾いに回る主を「ボランティア」としたところが、絶妙恋仕立て方と申し上げてよいでしょう。作品の内容、五七五のリズム、句全体の流れ、ことばの選択――どの点からとらえても、完成度の極めて高い「環境川柳」として、高く評価したいと思います。〈大木評〉
 〈17年度最優秀作品〉村上栄一郎技官(情報本部)
 「二度あげてビールも旨いクールビズ」
 環境問題で川柳を、となると、川柳というよりもむしろ標語っぽい五七五を作ってしまいがちなものですが、この句は、まぎれもない川柳作品です。説教、教訓、モットーのような匂いが全くしません。「二度」の「二」という数詞が、他の数字に替えられない「動かぬ数」になっている点も見事。それに今夏のファッションにもなったクールビズを取り入れ、その上に「ビールも旨い」と来ては、脱帽せざるを得ませんね。リズムも流れも好調。内容が前向きで明朗なことにも惹かれたのでした。〈同〉
 〈優秀賞〉▽「エアコンに慣れて忘れた四季の良さ」加藤誠1空曹(航空救難団)▽「もったいない地球を想う合いことば」新井香奈1海尉(情報本部)▽「クールビス人も地球も少し冷え」杉山義和1海佐(統合幕僚学校)
 〈佳作〉▽「アクセルで加速するのは温暖化」岡崎博3空佐(第12飛行教育団)▽「空き缶にまた会おうねとリサイクル」矢野靖智1空曹(航空教育隊)▽「資料です会議終わればごみの山」鍋田祥子事務官(海自補給本部)▽「エアコンを切って聞こえる虫の声」高木亮技官(契約本部)▽「打ち水とうちわで防ぐ温暖化」井上幸夫技官(技術研究本部)▽「ゴミ捨て場今じゃカラスのマイホーム」豊田広人3空曹(第4術科学校)▽「ネクタイに罪はないよとゆるく締め」矢島俊彌技官(技術研究本部)▽「草むらのゴミに泣いてる虫の声」佐野美智子技官(防衛医科大学校)

シリーズ イラク派遣を終えて
空自第2術科学校 第1教育部第1科 1空尉 宮坂保次
 私は、第6期イラク復興支援派遣輸送航空隊総務部広報班長として今年の3月18日から7月15日までの約4ヶ月間、クウェートのアリ・アル・サレム空軍基地において勤務しました。
 正直なところ、派遣前には多くの不安がありました。第一に、語学に自信が無く、海外勤務はおろか海外旅行の経験すら無いこと。第二に、「イラク派遣」という任務の場において「広報」という未知のジャンルで仕事をすること。第三に、任務に危険が伴うやもしれぬ中東での勤務であるということ。…派遣予定日が近づくにつれ、自分に降りかかるかもしれぬ災難等、良からぬ想像が頭をよぎる回数が増していき、人しれず懸命に故郷の光景や家族、友人の顔を瞳に焼き付かせていました。今でこそ笑い話かもしれませんが、同様の体験をした方もいるのではないでしょうか。
 クウェート到着時に不安を抱えながらも、「これからお世話になります」と明るく挨拶をした私を迎えてくれたのは、業務の山であって、到着直後はその処理に四苦八苦するところから始まりましたが、頼りになる上司や班員達が支えてくれたお陰で、なんとか乗り切れました。しかし、この時期の経験によって、残りの期間の業務について大胆かつ図太く向き合うことができるようになったと感じます。
 私が所属した広報班は、マスコミ等の部外者への対応や調整を行ったり、部隊の活動を記録してそれを広く知らしめることが主要な業務です。また、各関係国が参加するような行事の調整を行ったり、時には独自に企画を立ち上げて、取材の計画を練ったりすることもあります。特に、航空自衛隊では派遣部隊の活動を「アッサラーム・アレイコム」という部隊新聞にまとめ、空自の関係部隊に配布していますが、部隊の空気が伝わるような記事を作成する為に色々腐心しました。出来るだけ多くの方々に読んでもらえることを切に願いながら、締め切り前はいつも班員全員で深夜まで作業をしていました。
 生活環境に関して総じて思い返せば、当初に派遣が開始された頃と比較して、非常に快適な方向へ変化したように感じます。事務室は新築されて冷房もよく効きますし、食事は普通に日本食が食べられるようになりました(注:豚肉を除く)。ブロードバンド回線の導入により留守家族との連絡手段も増えましたし、その他の福利厚生面においても私個人としては、不便を感じる部分は殆ど有りませんでした。したがってこれからの時期は、今までは出来なかったような色々な活動を更に拡大していくべきです。私が勤務した第6期から、派遣期間は以前より1ヶ月間延びて4ヶ月間になったせいか、課業外の時間を利用して行う各国軍との文化交流(語学教室等)が非常に活発になりました。これから派遣される予定の方はこういった機会を有効に生かしたら良いと思います。国際的な舞台で活躍し始めた自衛隊を、自らの身で感じることの出来る格好のチャンスだと私は考えます。
 それでは最後に、遠く離れた中東の地で最高の指揮官、上司及び仲間達に出会えたことと、支援して下さった多くの方々のお陰で存分に勤務できたことに感謝して終わりたいと思います。本当に有り難うございました。

<彰古館 往来>
陸自三宿駐屯地・衛生学校
〈シリーズ44〉
軍隊料理法(2)
 昭和6年(1931)9月8日、陸普第三七五九号別冊として陸軍糧秣本廠が編纂した「軍隊調理法」ですが、実際に調理が可能なほど詳しい内容になっております。
 第一章は料理一般基本調理のほか、戦地を想定した特殊調理、第二章の調理法は主食、汁物、煮物、焼物、揚物、和物、漬物、舐め物(ジャム類)、甘味品と細分化され、その他に特別食として携行食(弁当)、流動食(病人食)、軟食(病人食)が挙げられています。
 主食に関しては米麦飯、栗飯、高梁飯、五目飯、などのほか、チキンライス、パンなどの調理法が紹介されています。
 明治43年版の「カレー汁掛飯」は「ライスカレー」として記載があります。材料は、牛肉40g、玉ねぎ40g、人参20g、馬鈴薯60g、カレー粉1g、小麦粉10g、食塩4g、ラードが8gです。
 まず牛肉を細く刻み、玉ねぎは千切りにしておきます。ついでラードを煮立て、小麦粉を入れ、攪拌し良く妙って油粉捏(ゆふんねつ)を作っておきます。
 次に鍋に一人当て200tの水を入れ、牛肉を投じて煮立て、人参を入れます。これが煮えたら、この煮汁の一部で先の油粉捏を溶き延ばし、カレー粉を入れます(これがカレールーです)。鍋に馬鈴薯を入れ、少し軟らかくなった時に玉ねぎを入れこれに先のカレー粉の溶き汁を混ぜ合わせます。これを食塩で味を調えて出来上がりです。
 備考として「飯は強目に炊くべし」「米麦飯も可」「青味を付けるに少量の青エンドウを用いるも可」とあります。熱量は324カロリー、蛋白質は18.5gで、かなりヘルシー食です。
 このレシピは明治43年(1910)版とも、最初に玉ねぎを炒める現在のカレーの作り方と比較しても、かなり異なった作り方です。
 これは本格的な専門職の調理と異なり、現在の陸上自衛隊のように少数の有資格者の下で多様な職種から一般兵が当番制で調理する特殊性と、野戦で大人数の食事を至短時間で調理しなければならない厳しい条件から生まれたのが「陸軍調理法」なのです。
 彰古館所蔵の昭和12年(1937)7月26日の陸普第三六七八号では、調理法自体は大きな変更はありませんが、主材料の牛肉の代わりに豚肉のほか鳥肉、羊肉、兎肉、貝類も併記されています。その量も牛肉が40gから70gに、玉ねぎが40gから80g、馬鈴薯60gが100gへとボリユームアップし、明治期のカレー汁が本格的な主食へと変貌してゆく様が感じられます。
 メニューも230種類以上となり、マヨネーズ、ソース、納豆、ラードなどの作り方にまで言及され、病人食は昭和16年(1941)に独立して「患者特別食献立ノ参考」として改定されます。
 昭和12年版は、当時実際に糧秣事務に携わった慶應義塾大学の小林完太郎教授が分かり易い現代語に改めた「元祖男の料理[復刻]軍隊調理法」が昭和57年(1982)、講談社から発刊されています。機会があれば是非ご一読をお勧めします。
 その内容は、明治以降近代日本の和洋中華料理の集大成であり、貴重な文化遺産だと言えるでしょう。

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