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   2005年4月15日号
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カンボジア地雷・不発弾処理を研修
(株)JMBA  岩瀬 直子
 私は弊社の公益活動支援事業部を通じて、自衛隊OBの方が中心となって活動している「日本地雷処理を支援する会」〈JMAS〉のPR活動をさせて頂いております。
 今回〈JMAS〉の西元徹也会長のカンボジア現地視察に同行し、地雷・不発弾処理活動の現場を研修する機会を得ることが出来ました。
 当事業部では様々なイベントへの参加、独自でのキャンペーンを行いながら各種公共性のある団体のPR、パネル展示などをさせて頂いております。私は〈JMAS〉のPR活動をする時、何を伝えたらもっと現実的に地雷・不発弾処理の必要性を理解してもらえるのかと悩んでおりました。いかに不発弾が身近なものかを、自分自身がカンボジアの生活環境を知り、より現地の人々に近い感覚、目線で〈JMAS〉の活動を見ることで、自分が伝えきれていない何かを見つけたいと思いました。
 農村の人々は牛、豚、鶏の家畜と共に生活し、そのような状況の中でも足りない収入は鉄くずを集めて1kg=800リエル(約20円)で売り少しずつでも収入になるように、どんな仕事でも頑張っています。
 以前に〈JMAS〉の方に不発弾の情報は農村の人々や遊んでいる子供達からが多いと聞いておりました。実際に私たちが農村を訪れた時も母親らしき女性が"私の家にも不発弾があって、子供が遊んでしまうからお願いします"と情報を寄せてくれました。不発弾は、裏庭、畑の隅、草の茂みの中、学校の裏、道路の脇など至る所にあり、一つが見えているだけでも掘り返してみると次から次へと23個も出てきたことがありました。私から見ると大小ぐらいの区別は分かりますが、使用済みのものなのか未使用のものなのか、どこの国で作られ、どのような爆弾で、どれ程の威力があるのかといったことは分かりません。地雷・不発弾は周りが錆びていて、ボール爆弾(子弾)などは私には鉄の塊にしか見えないのです。農作業中の男性は不発弾に鍬があたって初めてそこにあると気が付き横に寄せておくのです。今回も錆びた不発弾の横に鍬で削られた跡があるものがありました。情報を寄せてくれる人々も私と同じように不発弾が危険だという事は知っていても、専門的な知識はなく判別する事などは出来ないのです。しかし、だからといって農地が安全な場所になるのを待っているような余裕がもちろんありません。生きてゆく為には鍬に不発弾があたり、目の前に不発弾があったとしても、その土地を耕し作物を作らなければならないのです。現在までに〈JMAS〉は37,242個の地雷・不発弾の処理を行いましたが、まだ約500万個の地雷・不発弾が残されていると言われます。実際に現場へ同行をし、カンボジアの人々も私と同じなのだと感じ、そして、だからこそ正しい知識を持った人が必要なのだと強く思いました。毎日のように集めた地雷・不発弾の爆破処理を行うのですが、その威力によって処理に使う穴の深さや周辺の人々を退避させる距離を検討します。爆破時の音はドスーンという重い音が地面を伝い私の体にも響いてきました。CMAC(カンボジア地雷処理センター)の隊員はすかさず爆破後の安全確認に行きますが、それと同時に周辺からは子供たちが金属片を集めに来ます。子供たちは安全確認がとれると、きそって刃物のような金属片を袋に詰めて家に持ち帰り家計の足しにします。不発弾は純度の良い鉄で高く売れるので、見つけると自分で解体をしてしまう大人もいて事故が起こるそうです。昨年の不発弾での被害者は551人で地雷での被害者は340人でした。被害が大きい場合は跡形もなくなってしまい、一命を取り留めても手足を失うことが多く仕事にはつけません。義足を買えず片足で杖を突きながら物乞いをする姿を目にします。私は実際に腕の無い被雷者に物乞いをされた時、〈JMAS〉の活動はそのような人を減らすことなのだと思いました。
 〈JMAS〉では実際の処理活動の他にも自分達の経験、知識を利用し各農村などでの啓蒙活動を行っています。私はカンダールで、小学校を訪ねました。〈JMAS〉の方が地雷・不発弾を見つけた時の正しい手順を説明すると子供たちは大きく目を開き食い入るように聞いていました。子供たちに会ってからこの子供達のために出来る事はないかと考えるようになりました。
 何を伝える為に自分が活動しているのかカンボジアの人々を見て気付きました。不発弾の数や被害状況を伝える事もとても大事なことですが、まずはカンボジアの人々がこのような生活状況の中で〈JMAS〉の協力をこれほどまでにも必要としていることを伝えなければならないのです。私は大切なことを伝えるのは言葉だけではない事に気が付きました。出会ったJMAS・CMACの方々、農村でいっぱいの情報をくれたお母さん、子供達、メコン川での少年を想いながら、カンボジアの人々が〈JMAS〉そして私たちの支援を必要としているという事を忘れずに活動したいと思います。

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