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   2003年9月15日号
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「防災の日」
入間地区で政府主催総合防災訓練
小泉首相、石破長官が視察
自衛隊、警察、消防など連繋図る
 マグニチュード7.1。震度6強。直下型地震が午前9時30分、埼玉県南部を震源として南関東地方を襲った−−。8都県市人口3千3百万。その時ひとつの命も失わないために、自衛隊はどう対応するか−−関東大震災から80年にあたる「防災の日」の9月1日、今年は南関東直下型地震への対応に重点を置く政府総合防災訓練が行われた。主会場となった埼玉県入間市をはじめ全国各地で、防衛庁・自衛隊は消防・警察と協力して生活支援や医療活動に参加、訓練を支援した。また、防衛庁庁舎をはじめ全国各部隊においても各省庁・地方自治体と連繋をとりながら総合防災訓練を実施した。
C-1輸送機も各地から関係者空輸
〈入間基地〉
 訓練会場のひとつ、航空自衛隊入間基地では同日午前から、政府の「広域医療搬送活動アクションプラン」に基づく初めての広域応援訓練が行われた。このプランで、政府の要請に応じ航空自衛隊が、地元住民・警察・消防などと連繋して速やかに関係人員や物資を全国に空輸し、防災医療の質的向上を図る。
 予想される事態では、被災地の陸上交通が困難とされ、重篤患者は消防のヘリで基地へ。応急処置の後、C1輸送機で遠隔地の大病院へと搬送が予定される。
 当日の訓練ではまず、札幌、名古屋、福岡から緊急消防援助隊員、さらに宮城県警からは広域緊急援助隊員を、輸送機で被災地に輸送する実機検証が行われた。政府の訓練に固定翼が使われたのは初めて。
 また基地滑走路に応急救護用のテントが設置された。政府医療班として小牧基地からC1で到着した愛知県の民間医師団がテントに待機し、入間市内の被災想定地から次々と運ばれてくる重篤患者を診察した。空輸に耐えられるか、最終的に判断を下した後、空自隊員が患者の担架を担ぎ上げて輸送機に搬入。再び小牧へと飛び立つ訓練が行われた。
 多くの人員が医療サービスに割かれる事態を考慮し、訓練は4名の衛生専門官のほかは、衛生訓練を受けた一般隊員で行われた。航空総隊の中山3佐が現場を指揮し、第3高射の隊員たちが日頃の訓練成果を発揮。被災者の運搬や応急処置を迅速にこなし、誘導・移動を支援した。
 「今回は内閣府と民間の間に立っての広域医療搬送だが、将来的には空自だけで行う可能性がある」と話し、隊員たちは「気合を見て下さい」と今後の活躍に意欲を見せていた。
〈彩の森公園〉
 主会場となった彩の森公園では、大地震でのあらゆる被害を想定した訓練が各防災関係機関の連繋により、住民を主体として行われた。
 自衛隊は消防、警察との合同指揮所訓練をはじめ、災害医療、道路啓開、広域応援受入、土砂埋没救出など多岐にわたる訓練に参加した。倒壊した建物に取り残された市民を救出する訓練では、各自の役割を完璧にこなし、素早く入口を確保。重傷者に声を掛けながら臨機応変な対処で医療班に無事に引き渡した。
 また、午後には、小泉首相、鴻池防災担当大臣、石破防衛庁長官が同会場に到着。訓練を視察した小泉首相は閉会式で、市民と関係機関の意欲的で熱心な取り組みを評価し、「地震、災害はいつ起きてもおかしくない。身近なものとして、日頃からの心構えが大切」と述べた。

中業支は呼集・炊事訓練
 中央業務支援隊(隊長・宮崎悟介1佐)は9月1日、南関東地域大震災における対処行動を、呼集(登庁)訓練及び炊事訓練に分けて実施した。
 登庁訓練は、市ヶ谷駐屯地を中心にJR山手線内の交通手段は途絶しており、山手線までの通勤経路各線の交通手段は使用可能という設定で行われた。隊員は、未明から電話呼集網により、それぞれ受領した時間から登庁を開始した。山手線各駅で、一路市ヶ谷駐屯地を目標に隊員達は徒歩で登庁し、午前9時をもって登庁訓練の状況を終了した。
 また、炊事訓練は4個班45名で編成し、野外炊具(炊事車)1号による炊き出しを行った。炊事車を操作するのは初めてという隊員が大半であり、取り扱いの説明を受けた隊員達は、火の着け方や火加減をメモにとり、炊き出し訓練に汗を流した。米が炊きあがると同時に作ったカレーで昼食を食べ、一連の訓練を終了した。

陸自第1音楽隊がコンサート開催
 陸上自衛隊第1音楽隊が「第19回ファミリーコンサート」を開催します。応募方法などは次のとおりです。
 〈日時〉10月24日(金)午後6時30分〜午後8時30分
 〈会場〉板橋区立文化会館(東武東上線大山駅下車徒歩3分)
 〈出演〉陸上自衛隊第1音楽隊
 〈演奏内容〉第1部マーチを含む吹奏楽、第2部愛唱歌
 〈定員〉1,400名(抽選)=※入場無料
 〈応募方法〉往復はがきに、住所、氏名、年齢(1枚のはがきで2名まで)を記入の上、申し込み下さい。(10月11日必着)
 ※当日入場者の中から、抽選でヘリコプターの体験搭乗にご招待いたします。
  ◇ ◇
 〈応募先〉〒179-8523練馬区北町4-1-1 第1師団広報「コンサート(B)」係 電話 03-3933-1161(内線218)

守屋事務次官、"防弾チョッキ"を試着
<陸自松戸駐屯地>
隊員の安全管理を自ら体験
 8月19日、着任以来多忙な日々を過ごす守屋武昌新事務次官が、陸上自衛隊需品部隊の最前線松戸駐屯地(司令・小津光由陸将補)を約2時間にわたって熱心に視察した。
 需品といっても一般の市民にはあまりなじみがないが、関東補給処松戸支処が取り扱う品目は数千に達している。特にPKO支援業務が開始されて以降、(1)浄水装置 (2)支援地域の気象を考慮したテントや衣類、(3)日常の主食、副食、など毎日ごく当り前の生活をしている者には気がつかない大切な品目を取扱っている。現地からの要望をできるだけ聞き、限られた予算の中で、いかに要望を満足させるかはこの需品業務に携わる隊員達の知恵である。
 特に先の第156国会で成立した"イラク支援法"に基づく基本計画、実施計画と順をおって策定され、いずれ派遣される隊員達の健康管理、安全管理はなによりも重視されなければならない。それを実現するための方策として研究に研究を重ねた被弾を防ぐ"防弾チョッキ"の補給も松戸支処需品部の業務の一つである。
 守屋次官は、約12キロのこの防弾チョッキを着用して約500メートル歩き身をもってその着用性を実感していた(=写真)。
 自己完結型の自衛隊への国民の期待は今後益々、高まると見込まれる。そしてその期待に応えるため多くの隊員が汗を流し人知れず努力していることを知って頂きたい。視察後の次官の飾らない感想であった。

<論陣>
対立と不信が残った6ヵ国会談
北に振り回された日米韓
 北朝鮮に引きずり回された今年の夏だった。第一弾は北朝鮮籍の貨客船万景峰92号の入港騒ぎだった。船舶施設の不備で7ヵ月間、新潟に寄港していなかった万景峰92号がやってきた。拉致問題が実質的になにひとつ解決しないのに「万景峰92号が日本に寄港するのは国際法上の権利」だとして船足を進めてくる。同船は、これまで軍事転用可能機器問題や不正送金、対日工作員潜入、工作命令伝達、ひいては麻薬密輸など多くの疑いが持たれていたが、これらは「すべて事実無根、日本のねつ造話だ」と全く無視してきた。日本に協力的な面は見せたことがなかった。それでいて、自分達の権利は強引に主張、実行してくる。立腹以外のなにものでもない。
 8月27日から北京で開かれた日米韓中ロ北朝鮮の6ヵ国協議でも開き直り専門の北朝鮮だった。この国は「脅かせば、自国の言い分がまかり通るのだ」と固く思い込んでいるようだ。協議全体を通じていうと「北朝鮮には物事を平和的に解決しようとする努力は見られなかった」。
 核開発と核放棄について米国や日本が査察検証で完全に後戻りができない形での核放棄を北朝鮮に求めたのに対し、北朝鮮側は「米国が、敵視政策をやめるのが先決だ。その具体的方策として、米国が"対北朝鮮不可侵条約"を北朝鮮との間で締結すべきだ。敵視政策をやめなければ、北朝鮮は国際的に核兵器保有を宣言し、核実験を行う用意がある。また核弾頭を運搬する(攻撃用)ミサイル開発も行う−−」と豪語した。
 北朝鮮不可侵条約を結べば、どういうことになるかは一目りょう然である。まず、朝鮮半島の安全と同盟国である韓国をサポートするために、韓国に駐留している米軍の存在意義がなくなる。その上、沖縄に駐留している在日米軍も半減以上する戦略上の考え方もでてくる。安易な条約締結ひとつで朝鮮半島は武力大国北朝鮮の実質的支配下に置かれることになる。そんな算術計算的な分かり切ったことに米国がのるはずがない。
 核弾頭運搬手段としてのミサイル開発は、日本に対する脅しである。いま、北朝鮮が保有しているテポドン、ノドンミサイルは、その射程から見ても、米国本土に届くものではない。沖縄の米軍基地を奇襲する程度である。となると「ミサイル」は、日本相手に脅している以外にない。
 6ヵ国協議は、結局、"相互不信"に終った。
 北朝鮮の経済危機、食料不足、エネルギー不足は、いま極限状態にある。食糧、石油は一部、中国やロシアから援助してもらっているようだが、中、ロ両国とも無制限、無期限に"援助"できるものではない。6ヵ国協議の席上、北朝鮮代表は、米国に対し、「軽水炉建設開始時に約束した、毎年、原油の50万トンをよこせ」と強く要求したが「核放棄が先だ」と米国側にはねつけられ、要求は一歩も進展しなかった。
 6ヵ国協議とは別だが、北朝鮮は日本に対し非公式に"援助"と"取り引き"を申し入れてきたといわれている。取り引きとは拉致問題にからんでである。ある国会議員(北朝鮮寄り)に「拉致事件に関係している被害者の家族8人を日本に渡すかわりに「1人当たり10億円をよこせ」というものである。結局、この話は消え去ったが、正に北朝鮮の国家経済の貧困ぶりを見せつけさせられたひと幕であった。
 6ヵ国会談の次の日時は、まだ決まっていないが、情報筋によると年内になりそうだ。第1回の協議は、もっぱら"対話"が中心になった。いいことだが、協議を通して、北朝鮮が残る5ヵ国の言い分が何であったか理解できたかどうかである。次回までに"分析"ができていないと、次回は"対話"から"圧力"に変わることを北朝鮮は自覚しなくてはならない。なぜ、こんな心配をするかというと、さきごろ韓国・仁川で開かれた大学生のスポーツの祭典「ユニバーシアード」での北朝鮮、役員、選手、応援団の行動を見て、そう感じたのである。「会えてうれしい」横断幕の金正日総書記の写真が雨に濡れているといっては泣き、「北をののしった」と怒り、北の記者が集会参加者をなぐる。帰国時に空港で「いや味たっぷりの談話」を発表する。北朝鮮すべての考え方では、国際会談は決して成功しない。

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