防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース 防衛ホーム新聞社 防衛ホーム新聞社
   2003年4月1日号
 1面 2面 3面 6面 7面 8面 9面 10面 11面 12面

<論陣>
いま世界が考えることは何か
若者とのインタビューから
 「イラクのフセイン大統領と息子は48時間以内に外国に亡命せよ」「亡命はしない。ブッシュ米大統領は狂気だ」。さきごろ米国、イラクの激しい対立のとき「日本の若者は両国の指導者がなにを行おうとしているのかを知っているのか?」と思い街に出た。若者の町・渋谷である。「米イの大統領は一体なにを狙っていると思いますか」と大学生らしい若者に質問をぶつけてみた。最初の男の子の答えは「戦争の理由?そんなこと、オレには
関係ねえよ。むずかしいことを聞くなよ」だった。
 米国はイラク独裁政権を倒して民主々義国にし、中東での米国の国益を一本化しようとしている。また、イラクは地下に埋蔵されている膨大な石油権利を守って覇権を守ろうとしているのではないか。「3月18日以降、米英イそして世界経済などに関する情報が洪水
のように報道されている。きみら若者は日本の次の世代を発展的に構築することを年輩者は希望し、勉強してもらいたいと考えている」と議論のためのイントロを投げかけても「うるせえな。世界がどうなろうと知ったことじゃあない。オレ達は今が楽しければいいんだ。お前あっちへ行けよ」と怒鳴られた。
 次の女子学生は、前の男子に比べるとまだましだった。「こんどの出来事は完全に国際協調の基盤が崩れたと思います。日本はポスト戦争で中東安定のために努力するべきです。絶対に戦争に巻き込まれるのは反対です」。
 まあ、まともな答えだった。少し安堵した。
 次に六本木に行ってみた。「イラクの盾作戦をどう思うか」と聞いてみた。21歳の男子大学生が相手だった。
 「米国が怒るのは理解できる。イラクは国連の査察団が活動中、戦争開戦を先送りするために"大量殺りく兵器処分情報"を少しずつ少しずつ明るみに出すというかけ引きがひど過ぎた。12年間も国連の決議を完全に実現しようとはしなかった。これでは米国がイラつくのは無理がなかったと思う。ただ、米国は『おれたちが立ち上がれば、多くの世界の国ぐにはついてくる』と思っていた節がある。これは明らかに米国の読み違いだった」。なかなか勉強していた。ちょっぴり安心できた。
 彼らが一様に思っていたのは"テロ"の発生だった。口を揃えて「9・11は二度と起こし
てもらいたくない」だった。質問の中で理解できないことがひとつあった。「米国と比較的友好関係にあるフランス、ロシア、そして友好修正中の中国という国連安保理事会常任理事国の主要3ヵ国が、なぜ、米国の軍事力行使計画に、強力に反対したのか分からない
。イラクの立場を全面的に支持していたとは思えないが――」だった。
 実は、フランス、ロシア、中国の3ヵ国は、現在、イラクとの間でイラク国内での石油
開発の仮契約をしている。もし、イラク攻撃に賛成してフセイン政権が崩壊すれば、石油開発の権利(仮契約)が吹っ飛んでしまう。だから国連中心で物事を解決しようとしたのだ――と説明したら、理解してくれた。
 最後のインタビューは悲劇だった。知り合いの米国からの男子留学生と一緒に通りがかった若い男子に「いまの事態をどう思うか?」と聞いてみた。
 すると、男の子はニヤニヤ笑いながら、右手の人差指と中指を突き出して「ピース、ピース」と言った。とたんに留学生は顔を真っ赤にして怒鳴った。「きみ、なにがピースだ。きみはピースとはなにか分かっているのか。世界に真の平和(ピース)を実現させるために、きみはいまなにをやっているのか。簡単にピースを口にするな」。男の子の顔から笑顔は消え、少しの間、口をもごもごさせていたが、さっと闇の中に消えていった。恥ずかしかった。いま思い起こしても赤面ものである。現状では確かに国際連合の無力がはっきり見えるし、世界経済が将来どうなっていくのかという疑問は存在する。これを解決するためには世界の国ぐにが、本当に平和のためになにをするべきかを考え、実行すべきである。対立激化は悲劇だが、この悲劇は現実のものととらえ、これを「新しいチャンスとして新しい世界の建設に努力すべき」である。

6面へ
(ヘルプ)

Copyright (C) 2001-2014 Boueihome Shinbun Inc