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   2003年3月1日号
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自衛隊史跡めぐりシリーズ
尚古館 金沢駐屯地
 陸上自衛隊金沢駐屯地が所在する石川県金沢市は、前田利家公より加賀藩主14代約300年間にわたる加賀百万石の城下町として発展し、加賀友禅、金箔、九谷焼等の工芸品、及び食文化を含む優れた文化を始め兼六園は、「日本の三大庭園の1つ」として広く国内外に名声を博しています。
 金沢市は、幸いに戦禍も受けず城下町としての様相を現在も漂わせており、駐屯地は第9山砲連隊跡地にその古き良き伝統を継承しています。
 駐屯地正門を入ると左手に小高く茂った丘が目に入ります。これは「盤龍山」と呼ばれている公園で、日露戦争で第3軍司令官・乃木希典大将の指揮下に入り、旅順攻略の一躍を担った第9師団第7歩兵連隊が盤龍山を勇猛果敢に攻撃奪取、北陸健児の名を世に高めたことを記念し、当時の将兵を偲び、またこの輝かしい伝統と誇りを継承するために作られた公園です。
 前方に目を配ると、約20m幅の広い道路の左右には日露戦争の凱旋記念として植樹された約50本の桜が暖かく迎えてくれます。その桜並木を進むと、正面左手に旧軍当時の正門と古めかしい白壁塗りの建物が見えてきます。この建物は、明治30年名古屋から金沢の野村地区に移駐した第9野戦砲兵連隊の将校集会場として明治31年に建てられ、現在資料館として使われています。駐屯地の中で唯一、明治時代の建造物として隊員に親しまれています。
 この資料館は、当時第32代第7歩兵連隊長だった伊佐一男中将が「過ぎ去りし、昔を尊び、重んじ、大切に」と語ったことから、尊い偉業を成し遂げた諸先輩方の誇りと伝統を継承するため「尚古館」と名付けられました。
 一歩建物の中に入ると右手に旧軍コーナー、左手に自衛隊コーナーが設けられ、それぞれ貴重な写真や遺品が展示されています。
 旧軍コーナーには、旧陸軍の変遷、第9師団の戦歴や変革、歴代第9師団長、各部隊長名などを掲げたパネル、また初代第9師団長(大島久直中将)の写真、第7歩兵連隊初代旗手(千田登文少佐)の写真、盤龍山攻撃の戦火の中置き去りにされた連隊旗(一時敵の手に渡る)を自ら負傷しながらも奪還した様子を描いた荒島上等兵(乃木大将より個人感状を受ける)の絵画と写真などが展示されています。
 珍しい物としては、江戸時代末期に英国や仏国に留学し、軍隊設立の基礎となった書籍(翻訳された物)、日露戦争当時のロシア軍刀・ロシア軍の機関銃ベルト、支那事変時の支那軍の軍帽・青龍刀等、そのほか乃木大将の短歌を掲げた掛け軸、旧陸軍の大礼服や軍服・勲章等の貴重な遺品が展示されています。
 自衛隊コーナーには、自衛隊各部隊の識別帽(現在収集中)、自衛隊の変遷を記載したパネル、戦車やヘリの写真パネル、警察予備隊から現在までの自衛隊の制服や階級章、そのほか各種の砲弾や武器を展示しています。また、ビデオ鑑賞もできるように工夫されています。
 一方、資料館の南側には、日露戦争の凱旋記念碑や第9野戦砲兵連隊(大正11年より第9山砲連隊と改正)の記念碑・愛馬の碑、そのほか数点の記念碑が建立されています。
 この尚古館は一般にも公開され、年間を通じて多くの見学者が訪れています。

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【お問い合わせ先】
金沢駐屯地広報室 TEL076・241・2171(内線205・206)


「訓練始め」に参加して
福知山駐屯地業務隊 1曹  大槻 公明
 今年の業務隊の訓練始めは戦う業務隊を具現して、兵庫県和田山町にある竹田城登山である。隊の業務の特性上全員参加とはいかず、総勢47人の参加を得て1月9日、寒さ厳しい残雪の中訓練始めを実施した。
 偶然というか赤穂浪士47士と同じ人数となり、隊長以下47士は作業服・半長靴で張り切って営庭に集合した。当日は日頃から「晴れ男」と自称されている隊長の言葉通り晴天に恵まれて、天は我に味方した。
 山の麓まで館用車で移動し、頂上に構える竹田城を目指し約4キロの険しい道のりを、隊長及び旗手を先頭に各科建制順に登山を開始した。
 ここで竹田城について少し紹介しておくと、竹田城は、但馬の守護大名、山名宗全が永享3年(1431年)に着手し、13年を費やし標高353mの山頂に築いたと伝えられている。
 石垣の積み方は、織田信長の安土城と同じ技術で、自然石の石の声を聞きながら積むといわれる、近江穴太衆(あのうしゅう)の手による穴太流石積み技法が用いられており、石は花崗岩で最大のものは約5トンと推測されている。また、建物の配置から、別名「虎臥城」(とらふすじょう・こがじょう)とも呼ばれており、規模は南北400m、東西100mで、現存する山城の遺構としては全国屈指のもので、国史跡に指定されている。
 前置きはこれくらいにして、登山にあたり隊本部班長から偵察の結果、所々に残雪があり凍結しているので十分注意するよう指導があり、各人心を引き締め、一路頂上を目指した。
 初めは寒くて外被がいるかなと思ったが、歩くにつれ体が温まり、ちょうどよい登山日和になってきた。しかし事前の説明通り、結構雪が残っており日陰は凍結しているので、足下に注意しながら一歩一歩進んでいった。
 しばらくして、私の後方で「わぁー」という声がして振り向くと、総務科の某隊員が滑ってしりもちをついていた。幸い大事に至らず、みんな笑って「第1号がでたぞ。第2号は誰かな」と言いながら引き続き歩き出した。しかし心の中では「俺だけは第2号にはならないぞ」と思いつつ歩いていた。
 約1時間少しで頂上の竹田城についた。下から見たのと違ってかなり広く、とても400年たっているとは思えない程、石垣も立派である。それに周辺の見晴らしが素晴らしく、厚生班長の地点指示にみんなうっとりとして聞き入っていた。私も時を忘れて景色のよさに見入っていた。自称「晴れ男」(隊長)に感謝しながら。
 記念写真を撮り、各人今年1年の「無病息災」を心に願い、竹田城を後にして下山の途についた。途中、体力に一番自信を持っている厚生科の某2曹が第2号となり、みんなに大笑いされ、それが戒めとなり残雪や凍結の中、全員楽しく無事に下山することができた。
 今回の竹田城登山により今年も福知山業務隊は「一致団結」縦に横にすがすがしい風が吹き、業務の能率も上がり「職務の完遂」間違いなしと、全隊員心に誓って職務に専念している。

映画「ホタル」見て
第12普連第1中隊 1曹  山岡 和雄
 12月24日、午前中の弁論大会の熱気も冷めやらぬ中、駐屯地体育館で見た1本の映画「ホタル」。私の頭の中をふと「そういえば、去年はムルデカ、今年はホタルとカタカナ繋がりかな」との思いが浮かんだ。ムルデカが大戦後のインドネシアの独立と日本兵、ホタルは大戦後半の特攻から現在までの話、戦争後という点でも通じる。そんな気持ちを抱きながら、私は、照明を落とした体育館の中のスクリーンを見つめた。
 とかく特攻というと、特攻を考案したとされる海軍の大西瀧二郎中将や敗戦時、部下とともに沖縄の空へ飛んだ宇垣纏中将など海軍が目を引くが、「ホタル」では、4式戦「疾風」を使用した陸軍の航空特攻の模様を描き、戦争の悲惨な現実とそれに立ち向かい、国の為として、帰らぬ飛行へと移行する飛行兵の心の機微や取り巻く人々の物悲しさを扱う。
 特に韓国人の少尉が日本人の恋人と分かれ、日本人として特攻する件は、当時の日本の理不尽さを知る場面となり、主人公の実直な元飛曹長とその妻の繋がりへと続く重要なシーンであり思わず見入ってしまう自分がいた。大戦当時の無情の戦いと敗戦時の飛行場で焼かれる戦闘機の姿、現在の鹿児島での漁師生活との激しいギャップ、大戦時の暗い色合いと現在の明るい色合いの見事なコントラスト、そこに細々と真面目に生活する2人の姿。
 この題名であるホタルの場面は大戦シーンと夫婦が戦死した少尉のため韓国へ遺品を届けるシーンで象徴的に扱われる。最初は途中で寝てしまうかもと思いつつ見始めたが、気が付くと最後まで真剣に見ている自分があった。
 現在の状況を当り前の事として感受せず、もう一度考えさせる映画「ホタル」、心に残りました。

防衛ホーム俳句コーナー
 初花にうす汚れしと見しわが身  大谷 弥栄
 ひとしきり散りて黙せる夕桜  五貫 愛生
 あたたかや人あたたかな話して  岩崎 悦子
 傍に母在す思ひ草を摘む  神部 しげ
 吟行の刻を忘れて土筆摘む  成合よしひろ
 夫(つま)の住む黄泉路(よみじ)かくやと春の闇  箸方 えい
 落したる鼓持たせて雛納め  古賀 芳川
 人の出をよろこぶやうにさくら散る  畠中 洋子
 肩書は何んにもなくて日永かな  駒野 英明
 マニキュアに春を先どる色をもて  松村久美子
 好日の二人離れず耕せり  本吉のぼる
 北窓を開き山々鮮らけし  福士 定子
 花冷えや心の刺の抜け難し  吉田ゆき生
 大根咲き母を看取り姉妹  山田 晃栄
 心には遠き日のあり花の下  長谷川ハルエ
 駆落ちのダンサー老いて野に遊ぶ  石塚のぶゑ
 ささやかな願ひの糸をたぐりをり  小熊 和子
 退職の教師も共に卒業歌  菊池 緑
 春水の滴る舫ひ綱を張り  今井 文和
 かたまりて色の出てきし春の草  足立 徹
   選者吟
 畦どこも親しはこべの咲く頃は  保坂 伸秋
     (「栃の芽」誌提供)

 「栃の芽」誌をご希望の方は<栃の芽会連絡先=防衛庁技術研究本部第4研究所・畠中草史氏・TEL042・752・2411>へご連絡下さい。


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